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冨田勲
イーハトーヴ交響曲

ディスク
Tomita
Symphony Ihatov

Amazon

(4.0ch)

録音

2012年11月23日 東京オペラシティ コンサートホールでの世界初演のライヴ録音

演奏

大友直人指揮
日本フィルハーモニー管弦楽団
初音ミク(ヴァーチャル・シンガー)
篠田元一(シンセサイザー)
ことぶき光(エレクトロニクス)
梯郁夫(パーカション)
慶応義塾ワグネル・ソサィエティー男性合唱団、同OB合唱団
聖心女子大学グリークラブ
シンフォニーヒルズ少年少女合唱団

パッケージ

普通のプラケースにブックレット。ブックレットには冨田勲「イーハトーヴに寄せて」、片山杜秀「電気・音楽・四次元〜宮沢賢治と冨田勲の切り結ぶところ〜」。
歌詞。初演時のステージの白黒の写真。ジャケットは岩手山の大鷹。

収録曲

「イーハトーヴ交響曲」
・岩手山の大鷲
・剣舞/星めぐりの歌
・注文の多い料理店
・風の又三郎
・銀河鉄道の夜
・雨にもまけず
・岩手山の大鷲〈種山ヶ原の牧歌〉

アンコール
「リボンの騎士」
「青い地球は誰のもの」

宮沢賢治の世界を冨田勲が作曲した交響曲

 本作は、冨田勲の新作『イーハトーヴ交響曲』のSACDハイブリッド盤。2012年11月の初演コンサートのライヴ録音です。
 『イーハトーヴ交響曲』は、宮沢賢治の世界をもとに、冨田勲が書き上げたオーケストラ曲で、混成合唱と少年少女合唱も加わります。
 マルチチャンネルは、センタースピーカー、サブ・ウーファーなしの4本のスピーカーによるサラウンド。

ヴァーチャル・シンガー「初音ミク」の起用

 『イーハトーヴ交響曲』の話題は、なんといっても「初音ミク」という“ヴァーチャル・シンガー”を、数曲でフューチャーしていることでしょう。
 初音ミクは、その“萌えキャラ”に抵抗感をおぼえる方もいるでしょうが、早い話、これまでのシンセサイザー、サンプラーを進化させた、言葉(歌詞)を自由に作れる“電子音楽のひとつ”と考えれば、トミタ・サウンドに加わることに、なんの違和感もありません。

 冨田勲は、宮沢賢治の愛した、薄命の妹トシの分身のようなイメージを初音ミクに含ませたとか。
 実際「注文の多い料理店」をはじめ、「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」でオーケストラや合唱をバックに歌う、初音ミクの歌声は、現世とはちがう世界からの声のようで、幻想的です。
 さきに初音ミクを“電子音楽のひとつ”と書きましたが、正直、ゾクっとするものを、感じてしまいますね。コンサートではキーボード奏者により生演奏されました。

ロマンチックな作曲と合唱の素晴らしさ、冨田作品のなかでも一番かも。

 交響曲は、宮沢賢治の作詞作曲による「岩手山の大鷲」から始まりますが、冨田勲の作曲も、やはり、うまい。
 「銀河鉄道の夜」も冨田勳の作曲。
 途中、ラフマニノフの交響曲第2番から、有名な、とびっきり甘い旋律が引用されますが、それさえ自然に流れるほど、冨田さんの作曲した「銀河鉄道の夜」はロマンチックです(いい曲だぁ〜)。

 全曲で聴けるオーケストレーションは、ゴージャスなところ、土着的なところ(「剣舞」)あり、ポップなところ、現代音楽的なところとありと聴きごたえ十分。

 なかでも一番の聴きどころは、ほとんどの曲で歌われる合唱でしょう。いつもは合唱(それも日本語)というと、マイナーに思ってしまうのですが、ここでは、とても心に染み入ります。
 とくに「雨にもまけず」。まるで宮沢賢治の書いた文字から、音があらわれてきたようです。

 「イートハーヴ交響曲」には、「月の光」や「惑星」といった、これまでシンセサイザーで編曲した名曲に劣らないオリジナリティーを感じます。冨田作品でも一番の完成度と、聴きやすさがあるように思います。演奏時間も30分少々と聴きやすいです。

東京オペラシティーのS席を再現するサラウンド

 冨田勲のSACDといえば、「全方向のサラウンド」が特徴ですが、このSACDでは、コンサート会場の空間を再現するサラウンドになっています。
 音の移動などもなく、リアルに「東京オペラシティーのS席のベストポジションに、みなさまの耳が位置した状態を想定して録音」(冨田勲〜ライナーノートより)されております。

 前方のオーケストラや合唱は、クリアな残響で、リスニング・ルームにひろがります。
 クラシックのSACDでは、おなじみのサラウンドですが、このSACDのサラウンド空間は、ほんとうに透明で、「日本の録音技術はすごいなあ」と思ってしまいました。

 加えて、音の厚みや輪郭も、2chファンでさえ納得の力強さでした。合唱の声、各楽器のマイルドな溶け込み方も、SACDならではのサウンドです。
 初音ミクの声も会場で拾われた音で、オーケストラと合唱と綺麗に混ざっています。

 「イーハトーヴ交響曲」のあと、アンコール曲「リボンの騎士」で初音ミクがもう一度歌い、「青い地球は誰のもの」では合唱の素晴らしいアンサンブルが展開していきます。最後は万雷の拍手。
 リアルなコンサート空間で、冨田勲の紡ぎ出す宮沢賢治の世界に浸れるSACDです。

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冨田勲/イーハトーヴ交響曲

冨田勲のSACD
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