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SACD 伶楽舎
武満徹:秋庭歌一具

Toru Takemitsu
In An Autumn Garden

録音2001年、サントリーホール
国内盤、ソニーミュージック

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普通のプラケースにブックレット

怜楽舎の演奏家、芝祐靖のライナー「『秋庭歌』に魅せられて」には生前の武満徹との会話や、「秋庭歌一具」にかける思いが綴られている

それから曲の解説文もつく。それらを英訳したページもある。

伝統的雅楽を使った武満の作品

 この作品は伝統的な雅楽で演奏される作品です。60年代から雅楽に興味を持っていた武満ですが 、1973年に国立劇場の依頼で作曲された「秋庭歌」に 、のちに5曲が追加され「秋庭歌一具」全6曲として完成されました。
 この楽器は伝統的な雅楽の楽器を使っていますが、スコアは完全に西洋の五線譜に書かれています。
 楽団を4つのグループに分け、中央(グループA)、後方(グループA')、後方左(グループB)、後方右(グループC)に分かれて位置します。
 この4つの楽器群がエコーのようにこだまし、反復し、武満独特の「たゆたう空間」を現出します。
 雅楽のために書かれた現代音楽としては、再演も多く、日本ではもちろん「タングルウッド音楽祭」やニューヨークのリンカーンセンターでも演奏されたようです。
 初めて聴くと、その音色から、「いくら武満でも、昔ながらの雅楽か?」と思ってしまいそうですが、よく聴くとまぎれもない“武満の音楽”だと分かります。オーケストラで演奏していれば、あの〈タケミツ・トーン〉になったことでしょう。
 個人的には「地平線のドーリア」に似た趣きだと思いました。武満特有のゆらぐ音はもちろんですが、鋭角的な切り口に共通点を感じてしまいました。

マルチチャンネルは、ざっくり空間を切り取ってきたよう

 本作品の醍醐味はなんといってもマルチチャンネルでしょう。
 サントリーホールを使用し、DSDマルチチャンネル録音された音は、まぎれもなく〈空間〉です。サントリーホールを、ざっくり切り取ってきたような空間がリスニングルームに広がります。
 これだけ見事なサラウンドだと、マルチチャンネルの音を説明する「残響音が」とか「ホールトーンが」という常套句も必要ありません。
 立ち昇っては消えていく武満の音楽は、マルチチャンネルでこそ本質をパッケージしていると思います。ステージ上に離れて配置された各グループの音が、立体的な距離を感じさせてくれます。
 誰が聴いても極上のサラウンド空間を楽しめるSACDだと思います。SACD専用ディスクです。

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武満徹のSACD
武満徹:スペクトラル・カンティクル 武満徹:秋
2009.12.16