topaboutblogclassicaljazzpopsjpopselect
S
シュトゥットガルト室内管弦楽団
バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全6曲)

ディスク
Stuttgarter Kammerorchester
J.S. Bach:
Six Brandenburg Concerts
BMW 1046-1051
Complete Edition

Tower Records
Amazon


録音2000年
輸入盤、Tacet
SACDハイブリッド 2枚組

角の丸いプラケース。1枚ものケースにディスク2枚収録。

ブックレットには英独仏語で解説。「TACET Real Surround Sound」で、サラウンドに関する解説。各曲ごとのサラウンド解説文とサラウンド図(右下図)。

あと、バッハと演奏者に対する簡単な解説。

ドイツの名門シュトゥットガルト室内管弦楽団の演奏

 ドイツのTACET(タチェット)レーベルは高音質録音で有名なレーベルです。同時にサラウンドにも意欲的なSACDをリリースしているので紹介します。
 このSACDはバッハのブランデンブルグ協奏曲全曲(2枚組)です。バッハ好きから、バッハ初心者まで、誰もが満足するバッハの管楽器曲の名作でしょう。
 演奏をしているのは、かのショトゥットガルト室内管弦楽団。現代楽器のコクのある音色を聴かせてくれます。ドイツ特有の厚みのある音ながら、キビキビとした演奏。たとえるなら「3ナンバー車の快速走行。発進、カーブは5ナンバー車のキレ」でしょうか(笑)。
 あとはサラウンドのことばかり書くので、誤解されると困るので先に書いておきますが、このSACDは演奏だけでも大変素晴らしいもの。「ブランデンブルグ協奏曲」の定番としても残りそうな演奏です。
 TACETの創立者は、元シュトゥットガルト室内管弦楽団のメンバーらしいので、オーディオの他に演奏へのこだわりも確かのようです。SACD2chステレオでの再生音も豊かで弾力性のあるものです。

TACETのこだわりのサラウンド

 さて、このSACDのマルチチャンネルは、演奏者が360度リスナーを取り囲むサラウンドです。
 ブックレットのサラウンドの解説を読むと、TACETのサラウンドに対する姿勢がまず書いてあります。僭越ですが、意訳させてもらいます。
 「クラシックのマルチチャンネル、ほとんどのエンジニアがコンサートホールの再現を目指しているけど、それじゃ前進しないよね。
 このブランデンブルグ協奏曲は、たった一人のリスナー、あなたのために録音されました。演奏家もエンジニアもあなただけに向かって仕事をしていますよ!」
 という感じ(詳しくはご自分で買い求めてどうぞご確認ください)。

各曲ごとに異なる配置。ソロ奏者が目の前にいるサラウンド

 ブランデンブルグ協奏曲は曲によって、ソロ楽器がちがうのが特色ですが、曲ごとに、ソロ楽器とオーケストラの位置を変えたサラウンドで、その協奏曲(ソロ楽器)の音色が引き立つようにうまく制作してあります。
 ちなみに、センタースピーカーは使用しません。前方2本、後方2本の4chによるサラウンドです。
 右にブックレット収録の楽器配置図を転用しておきますのでご覧ください。

 第1番はオーソドックスな前方配置。アンビエンス音が後方に広がる、いわゆる「ホールで聴くような」サラウンドで、これは意外と面白くありません(笑)。
 次からTOCETの真骨頂です。以後はソロ楽器はオンマイク気味になり目の前で演奏しているような生々しい音が出てきます。
 第2番はソロ楽器4本が前方と後方に位置し、オーケストラはその周り360度に配置。この曲の聴き所トランペットやフルートが、自分のすぐ横で鳴っている感じ。自分が皇帝になって、シュトゥットガルトの演奏家をまわりにはべらしているようです(笑)。
 第3番は弦楽器3セクションが左、前、右に並ぶ。正確には9本の弦楽器が、ゴリゴリと自分の周りで弾いてくれる。ノリノリの音楽が、重厚な音色と相まって極楽の音空間です。
 第4番第5番では、なんとソロ楽器を前に残して、オーケストラは後方に。第4番のリコーダーにはさまれたソロ・ヴァイオリンのナマナマしさ。第5番のチェンバロとフルートの掛け合い。どちらも前方空間があいているだけに、ナマナマしいです。オーケストラは後方から自分の背中をサポートしているようで、心地よい。
 第6番は、ソロのヴィオラが前方と後方に別れ、他は左右にという配置。これも斬新ですが、これまた皇帝(自分のこと)になったように、中心に座して「くるしゅうない」と聴けてしまいます。

 というようなサラウンドですが、とにかく「音楽として、とても気持ちよく聴ける」サラウンドです。
 正直、今までは「ホールトーンのサラウンドがクラシックらしい」と思っていましたが、このサラウンドを聴くと、「このほうが、生の音楽としては、リアルなのではないか」とさえ思ってしまいました(もちろん「ブランデンブルグ協奏曲」だから可能なのですが)。
 「すばらしい演奏」に「高音質」、そして「すばらしい音場」
 クラシックのマルチチャンネルとしては異色で、かつ成功しているサラウンドだと思います。今夜も「ブランデンブルグ協奏曲」に飛び込みます!

Tower Records
Amazon

2010.5.17