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菊池洋子(ピアノ)井上道義指揮/オーケストラ・アンサンブル金沢
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、きらきら星変奏曲、ソナタ第9番

ディスク
Yoko Kikuchi
Mozart:
Piano Concerto No.20 etc

Amazon ¥2,692

国内盤、エイベックス

収録曲と録音

・ピアノ協奏曲第20番
2006年9月17/18日。18日は石川県立音楽堂でのLive Recording(24bit/96kHzをDSDマスタリング)
・きらきら星、ソナタ第9番
2006年8月15/16日

普通のプラケースにブックレット。ブックレットには、山野雄大氏のライナーと曲解説。

フォルテピアノを思わせる奏法が、モーツァルトを際立たせる

 本作は『モーツァルト・アルバム』(レビュー)に続く、菊池洋子の第2作アルバムです。
 モーツァルトのピアノ協奏曲で最も有名な第20番。そのあと「きらきら星変奏曲」とピアノ・ソナタ第9番が収録されています。

 まず第20番。オーケストラ・アンサンブル金沢の、ウィーンのオーケストラと比べても全然遜色ない、コクのある音があらわれます。
 デモーニッシュな哀しみの前奏のあと、あらわれるピアノ・ソロは、この曲でよく聴かれるロマン派風と違うので「あれ?」と思われる方もいるでしょう。

 菊池洋子の演奏は、コロコロと音を転がす、“いかにもロココ風モーツァルト”とはちがいます。
 音のニュアンスを省略した、いくぶん「ペタペタ」した感じの奏法。もちろんこれはモーツァルト時代の楽器“フォルテピアノ”を思わせます(実際イタリアではフォルテピアノ科でも学んだとか)。
 音に余分な“衣装&贅肉”がない分、モーツァルトの構築した音楽が、すごくハッキリしてきます。これが第20番の「ロマン性」を際立たせている気がして満足でした。

独奏曲がメインでもいい、「きらきら星変奏曲」と第9番

 菊池洋子のモーツァルトが、より素晴らしいと思ったのは、独奏曲の「きらきら星変奏曲」とピアノ・ソナタ第9番でした。

 ぶっきらぼうのように始まる「きらきら星」のテーマがいい。
 そこから始まる変奏は、粒だちのいい、しっかり底まで打鍵したような「快感のピアノ音」。軽量感と重さのそなわったモーツァルトです。ここにはグールドのような疾走感さえ感じました。

 ピアノ・ソナタ第9番も素晴らしかったです。哀しみから始まり、いろいろな世界に、聴く者を引き入れるこの曲が、思い切り堪能できました。昨今のモーツァルトのピアノ・ソナタで、こんなに耳を離さない演奏も珍しいです。
 個人的にはピアノ・ソナタ全集を期待したいところ(と思ったら、続く第3弾はピアノ・ソナタ集。でもCDでした。嗚呼、残念!)

音の甘みを出すサラウンド

 SACD2chの音は、“シャワーのような飛び出し”のいい音。協奏曲ではオーケストラが心地よく響きます。木管の音がよく聞えます。

 マルチチャンネルでは、“シャワーのような飛び出し”から“場”に変わります。協奏曲はライヴ録音ですが、ホール感は薄め。そのかわり前方に張り出してくるような音場が現れます(うすーい残響音はあり)。音に立体感が加わり、ピアノとオーケストラの音のニュアンスの差も感じます。

 「きらきら星変奏曲」とピアノ・ソナタ第9番。マルチチャンネルでは、ピアノ音のエッジに丸みが加わり、音色に甘みがでます。
 クラシックのサラウンドというと、「ホールのような音場」と思われる方もいるでしょうが、このディスクでは、「音の甘みを出すサラウンド」に感じました。こういうサラウンドもあるのですから、マルチチャンネルは奥が深いです。

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菊池洋子のSACDレビューとCD紹介
モーツァルト・アルバム/菊池洋子
キラキラと輝くモーツァルト
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B001JI47OM モーツァルト:ピアノ・ソナタ集(第1・12・17番)(CDです)
第3弾は、やっぱりピアノ・ソナタでした。でもCDでのリリースは実にもったいない。
2011.8.1