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ベンジャミン・ハドソン(vn/va), セバスティアン・クリンガー(ce), ユルゲン・クルーゼ(p)
アルヴォ・ペルト:鏡の中の鏡 ~ ペルト作品集

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Arvo Part
Spiegel im Spiegel

Amazon


輸入盤 Brilliant Classics
録音2006年

1 鏡の中の鏡(ヴァイオリン&ピアノ版)1978年
2 アリヌーシュカの癒しに基づく変奏曲(ピアノ独奏のための)1977年
3 アリーナのために(ピアノ独奏のための)1976年
4 鏡の中の鏡(ヴィオラ&ピアノ版)1978年
5 モーツァルト=アダージョ(ヴァイオリン、チェロとピアノのための) 1992年
6 鏡の中の鏡(チェロ&ピアノ版)1978年

角の丸いプラケースにブックレット。ブックレットは二つ折りで英文解説のみ。写真もなしでかなり安っぽいのだが。

ペルトの室内楽を収録したSACD

 本作は現代音楽作曲家としては、異例に聴く人が多いアルヴォ・ペルトのSACDです。収録されているのは1978年作の「鏡の中の鏡」の3ヴァーションほか。


レーベルはBrilliant Classics。そのロゴといい、Amazonでの低価格といい、とても安っぽいイメージですが(笑)、感銘は一流レーベルのSACDと同じ。

ゆっくりと沈殿する音楽

 ペルトというとストイックな〈鈴鳴り様式〉の作風で有名ですが、本作の収録作品は、もう少しロマンチック(または感傷的)で旋律的に思いました。

 「鏡の中の鏡」は、簡単と言っては語弊がありますが、単純なピアノの動きにのせて、ヴァイオリン(ヴィオラ、チェロ)が最小かつ、叙情的な音階を奏でていきます。
 あいかわらず、ペルトらしい静寂な世界ですが、ペルトの他の作品にみられた禁欲的な感じは希薄で、むしろ聴く者の心を溶かしてくれるような暖かい旋律です(簡単に言えば「癒し系」)。
 普通に聴いても引込まれるでしょう。でも、こちらの心が弱っているとき、この音楽はそうとう染み入ると思います。

 「鏡の中の鏡」はヴァイオリン版、ヴィオラ版、チェロ版の三種類が収録されていますが、楽器を変えただけで、同じ曲を三つ演奏のとは意味合いが違いいます。
 SACDを聴いていると、ヴァイオリン版、ヴィオラ版、チェロ版と聴いていくにつれ、雪が降り落ちるように、ゆっくりと音楽が沈殿していくような気がします。

モーツァルトの哀しみを包むペルトの世界

 5曲目の、モーツァルトの「ピアノ・ソナタ K.280」第2楽章の哀愁のメロディを引用した曲も、本作の聴きどころでしょう。
 ペルトの世界と、モーツァルトの哀しみの旋律が見事に融合しています。この曲では、ペルトにしては激しい打鍵音もあり、アルバム全体にコントラストを与えています。

水面の波紋が広がるような清涼なサラウンド

 こういう音楽ですから、サラウンドで聴くのが極上だと思います。言葉では言いにくいですが、水面の波紋が広がるような清涼なサラウンドに思います。ホールの感じというより、音楽と同じ場所にいるようなサラウンド空間です。

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Arvo Pärt/鏡の中の鏡~ペルト作品集(SACD)(Arvo Part:Spiegel im Spiegel)

2014.4.14