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田部京子&カルミナ四重奏団
シューベルト〈ます〉/シューマン:ピアノ五重奏曲

シューベルト「ます」/シューマン:ピアノ五重奏曲

Hybrid Stereo/Multi-ch (マルチは4ch)
録音2008年1月、チューリッヒ
国内盤、コロムビア
2008年レコードアカデミー賞
2008年CDジャーナル高音質企画賞

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収録曲
・シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調 D 667, op.114〈ます〉
・シューマン:ピアノ五重奏曲変ホ長調 op.44

ふつうのプラケースにブックレット

ピアノと弦楽の溶け込み具合がいい〈ます〉

 本作はピアノ五重奏曲、すなわち、ピアノと弦楽四重奏の組み合わせ曲を2曲収録しています。
 有名なシューベルトの〈ます〉は、編成がピアノ+ヴァイオリン+ビオラ+チェロに、コントラバスが加わった独特の編成で、低音が充実した室内楽です。

 昔から〈ます〉のレコードはよく聴いてきたのですが、「なんか、ピアノと弦楽部が溶け合わない曲だな」と感じていました。
 「コンサート・グランドピアノじゃあ、シューベルトの意図したとおりにならないのか」
 なんて、シロウト考えで分析しておりました。じゃあ、古楽器による〈ます〉ならいいだろう、と古楽アンサンブルの演奏を聴いても同じだった。
 「しゃあない、〈ます〉はこういう曲か、いいメロディーなんだけどナア……」
 なんて結論づけようとしていたところ、この田部京子とカルミナ四重奏曲の演奏を聴いてびっくり。ピアノと弦楽がすごく溶け合っている!
 ついに理想の「ます」に出会えました。これならシューベルトのメロディが居心地よく聴けます。
 もちろん田部京子の弾くのはスタイウェイです。田部京子とカルミナ四重奏団の相性の良さ、演奏のうまさ、そして録音の良さでしょうね。

これはシューマンの傑作だ、と今さら知りました

 もう1曲のシューマンの「ピアノ五重奏曲」は、ピアノと標準的な弦楽四重奏の組み合わせの五重奏です。
 シューマンの「ピアノ五重奏曲」は名曲らしいのですが、恥ずかしながら、今回初めて聴きました。
 いやー、これは傑作ですね。ロマンチックなメロディー、ベートーヴェンも顔負けの構成力、まるで交響曲を聴くような充実感をもたらしてくれる室内楽で、イッパツで気に入りました。数あるシューマンの代表作の中でも、最右翼にしてもいいくらい。
 田部京子とカルミナ四重奏団の演奏もすごくいい。葬送行進曲風の第2楽章の、刻々と変わっていくニュアンスは素晴らしい。第3楽章、第4楽章のピアノと弦楽のアンサンブルも、すごくカイカンでした。

室内楽をリスニングルームで聴くには、ベストな音

 演奏がいいうえに、録音が良かったのもうれしかったです。
 マルチチャンネルは、センターなしの4ch収録です。残響音はほとんど感じない響き。リアスピーカーはちゃんと鳴っているのだが、鳴っている感じがしないほど、前方の実在感のある音場に心奪われます。
 残響に頼らない録音ゆえ、スタッフはシビアな技術を要求されたみたいですが、これが見事に成功していています。
 残響音が少なめといっても、音楽として聴きやすい「うるおいのある響き」なんですよね。そこがいいです。楽器それぞれのテクスチャアがわかると同時に、全員の溶け込んだ響きも豊か、という音。
 クラシックの録音の場合、ともすれば近視眼的か、ホールトーン的かと、分類されやすいのですが、どちらでもない。この鳴り方はいいです。室内楽スニングルームをリで聴くには、ベストな音に思いました。
 なおこのSACDは高音質を生かし、アナログレコード2枚組になって発売もされております。アナログファンの方はこちらも魅力ですね。

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