topaboutblogclassicaljazzpopsjpopselect
S
ジョン・バット(指揮、オルガン)ダンディン・コンソート  
J.S.バッハ:ヨハネ受難曲(典礼で演奏された受難曲の再現)(世界初録音)

ディスク
J.S.Bach :John Passion
Reconstraction of Bach's Passion Liturgy

Amazon


録音2012年9月、11月、エジンバラ
輸入盤 Linn Records
SACD2枚組。

B009G7WUOM

三つ折りデジパック。ブックレットには原語歌詞と英訳歌詞。ライナー、演奏家の白黒写真少々。

収録曲
SACD1
・J.S.バッハ:コラール前奏曲『イエスが十字架にかかりたまいし時』 BWV.621
・シャイン:会衆のコラール『イエスが十字架にかかりたまいし時』
・ブクステフーデ:前奏曲嬰ヘ短調 BuxWV.146
・J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV.245(第1部)
・J.S.バッハ:コラール前奏曲『おお罪なき神の小羊よ』 BWV.618
・作曲者不詳:会衆のコラール『おお罪なき神の小羊よ』
・J.S.バッハ:コラール前奏曲『われらを救いたもうキリストは』 BWV.620
・J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV.245(第2部)途中まで

SACD2
・J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV.245(第2部)続き
・ガルス:モテット『見よ、ただしき人が死にゆく様を』
・作曲者不詳:応唱、特祷、祝祷
・シャイン:神の恩寵われらにあり
・J.S.バッハ:コラール前奏曲『いざもろびと神に感謝せよ』 BWV.657
・クリューガー:会衆のコラール『いざもろびと神に感謝せよ』

バッハの時代、ライプツィヒの「聖金曜日の晩課」で演奏された構成を復元

 本作は『マタイ受難曲』『ロ短調ミサ』で、画期的なSACDをリリースしているジョン・バット指揮・ダンディン・コンソートの『ヨハネ受難曲』です。

 この『ヨハネ受難曲』の特徴は、1682年にライプツィヒの「聖金曜日の晩課」で演奏された構成を復元しているということです。

 「ヨハネ受難曲」や「マタイ受難曲」は、当時の教会では、現代人がレコードで聴くように、一気に演奏されるわけではなく、前後、真ん中に、他のコラールやモテット、オルガン曲、説法などを挿入して演奏されたそうです。

 このSACDはそれを復元しております。構成の詳細は左コラムを見てもらうとして、大雑把には次のとおり。

1 オープニングの祈祷(コラール、オルガン曲)
2 ヨハネ受難曲 第1部
3 会衆の応答(コラール、オルガン曲)
3 説教(説教、オルガン曲)-SACD未収録で無料ダウンロード-
4 ヨハネ受難曲 第2部
5 しめくくりの祈祷(コラール、オルガン曲)

「ヨハネ受難曲」が始まるまえから、音とサラウンドに惚れてまうやないか

 最初にバッハ作のコラールや、他の作によるモテット、オルガン曲が3曲演奏されます。
 合唱はグラスゴー大学チャペル合唱団。
 マルチチャンネルでは合唱の響きが左右に広がり、リスニング・ルームを包みこみます。残響、音の柔らかさにうっとり。

 つづくパイプ・オルガンの厳かなソロも、荘厳な響きで、まるで教会にいるよう。
 この間、約9分。つまるところ「ヨハネ受難曲」が始まる前に、音質とサラウンドに「惚れてまうやないか」です。

これなら聴ける、現場で演奏されているヨハネ受難曲

 そのおごそかなオルガン曲が終わるや、オルガンの響きも消え切らないうちに、すかさず「ヨハネ受難曲」の1曲目が始まるのです。あのイエスの苦難を予感する、不吉な前奏曲。
 この効果は、うまい。「さあ、はじまったぞ!」という感じで、一気に聴き手を曲に引込みます。

 「ヨハネ受難曲」第1部が終わったあと、コラールやオルガンがあらわれて、聴き手の気分を変えるところも、やはり効果的。
 NHK-BSの長いオペラ放送では、途中に軽い曲が流れて「2分間休憩します」という時間帯がありますが、ちょうどそんな感じです。

 第2部が終わったあとも、コラールやオルガン曲がでてきます。
 これなど、メイン演目を聴き終わって、早く家に帰りたいと落ち着かない雰囲気になってしまい、それがかえって「〈ヨハネ受難曲〉を聴いた」という実感になるんですね(笑)。

 今まで「ヨハネ受難曲」は「マタイ受難曲」に比べて、聴き通すのにシンドイものがありましたが、このSACDのような構成なら、面白く聴けると思いました。当時、こういう演出で信者に聴かせた理由がわかる気がしました。

 なお、当時は30分以上の「説法」のパートもありましたが、さすがに、それをSACDに入れるわけにはいかないのでしょう。その部分はLinnのサイトで無料ダウンロードできます。

合唱団、歌手、オルガン、オーケストラの響きでサラウンドの妙

 聴いた感じ、「ヨハネ受難曲」での合唱は『マタイ受難曲』のSACDとおなじく「ワンパートひとり」に感じました。
 というのも、「ヨハネ受難曲」以外のコラール、オルガン曲では、グラスゴー大学チャペル合唱団の合唱や、パイプオルガンが、左右大きく広がるのですが、「ヨハネ受難曲」の合唱は小さくコンパクトな響きです。
 このようにマルチチャンネルでは、「ヨハネ受難曲」とそれ以外の、「音響の差」を感じ取れて、臨場感がリアルに再現されるところも聴き所です。

B009G7WUOM
バット/J.S. John Passion

バット指揮ダンディン・コンソートのSACD
バッハ:マタイ受難曲/バット指揮ダンディン・コンソート
今までの古楽器演奏とちがう、少人数の合唱・演奏隊による「マタイ」
Amazon
ヘンデル:オラトリオ「メサイア」/バット
個性的な独唱者、素晴らしい合唱と録音で聴く《メサイア》
Amazon
2013.4.28