The Genius of Charlie Parker #3
Now's The Time
The Quartet of Charlie Parker
MONO
国内盤、Verve
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普通のプラケースにブックレット。ブックレットは6つ折のペラ紙。
ブックレットには、オリジナルLP掲載のビルボード誌エディター、ビル・サイモンのライナー(訳小川隆夫)。
岡村 融氏のビル・サイモンのライナーの間違い指摘や、パーカーの本録音にまつわる逸話を書いたライナー。
オノ・セイゲン氏のライナー「DSDマスタリングについて」「ナウズ・ザ・タイム」について。
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オノ・セイゲン氏のリマスタリングによる、アルト・サックス、バッチリの音
本作はチャーリー・パーカーの1952年録音(LPではA面)と、1953年録音(LPではB面)を収録したアルバム。1955年に34歳で亡くなるパーカーの、円熟期の演奏が収められています。
DSDマスタリングはオノ・セイゲン氏。
氏がライナーに、「オーディオ機器ではなく、アルトという楽器の可能性」を意識してリマスタリングした、と書いているとおり、アルト・サックスの生々しい音が飛び出してきます。
トラック1〜6は、サックスのベル部分を間近で覗いているような生音。これが1952年録音とは思えません。ちょうどチェロの倍音たっぷりの音のように、アルトの豊かな音が堪能できます。
筆者もアルト・サックスを吹いていたことがあるので、この音は「汚い音まで全部聞えちゃう、あのナマナマしさだ!」と、「もろ、サックスの音」を思い出してしまったくらいです(もちろんパーカーの音はもっと上質)。
バックのベース、ピアノ、ドラムの音は、さすがにパーカーの影に隠れぎみですが、パーカーが吹かないときの各ソロは、十分なクオリティで聴けます(とくにベース)。
続く、1953年録音のトラック7〜12の音は、残響のある中での音。通常のライヴ演奏なら、このくらいの残響のほうが聴きやすい(そして、吹きやすい)音であります。
アルト・サックスの音は艶が出て、こちらもパーカーのアルト・サックスを堪能できます。バックの音も52年録音と同じく、ソロでは良好です。
パーカーのインプロヴィゼイションは、3分間の造形美
それにしてもチャーリー・パーカーの、インプロヴィゼイションは聴いていて飽きません。
はちきれんばかりの音に、早いフレーズ。
これだけならキャノン・ボール・アダレイでもいいわけですが、パーカーのインプロヴィゼイションは、派手な中にも「禁欲的な造形美」を感じるのです。まるでロダンが彫刻を作っているかのように、パーカーが「3分間で造形する美」を聴いてしまうのでした。
ですので、普通は聴きたくないテイク違いも、パーカーの場合、まったく気になりません。
「キム」「コズミック・レイズ」「チ・チ」には、オリジナルLPどおり別テイクが収録されているのですが、全部聴けます。
SP録音の時代を反映して、各曲が3分前後で、スパッ、スパッと終わっていくので聴きやすいです。
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オノ・セイゲン氏リマスタリングによる“スープリーム・サウンド・エディション”SACD
2012.3.5
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