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SACDhybrid ジョー・ヘンダーソン
ラッシュ・ライフ


JOE HENDERSON
LUSH LIFE
Hybrid Stereo/Multi-ch
録音1991年、ルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオ
Verve
SACDハイブリッド

Amazon(輸入盤)
Amazon(国内盤)

角の丸いプラケース。ブックレットにはスタンリー・クロウチ、ディーン・ブラットのライナー。

国内盤は、輸入盤にライナーの日本語訳を同封したもの。

ストレイホーンの名曲を集めて、ヘンダーソンが素晴らしいプレイ

 本作は、デューク・エリントン楽団の作曲家として有名なビリー・ストレイホーンの曲を、ジョー・ヘンダーソンが演奏するアルバムです。
 ジョー・ヘンダーソンは1960年代、新主流派のテナー・サックス奏者。ブルーノートのリーダー作やサイドマンとして活躍し、歳を重ねてきました。そして、この録音は1991年。若手ウィントン・マルサリスも数曲に参加しています。
 このアルバム、ストレイホーンのカヴァーに甘んじるという雰囲気はなく、あたかもジョー・ヘンダーソンのオリジナル・アルバムのような完成度です。 伝統的なアコースティックな演奏は、ベースやドラムスとのデュエット、トリオ、クァルテットと曲によって編成を変えながら、魂のこもったブローを聴かせます。

 これを聴いていると、彼と同期のコルトレーンやエリック・ドルフィーらが活躍した“60年代ジャズ”が、SACDという高音質で蘇った気がします。テナーの掠れ具合、アドリブの深み、まるでコルトレーンを聴いているかのよう。
 数曲で参加のマルサレスのトランペットもいい。テクニックだけが空回りの印象はここにはありません。「こういう吹き方なら、大好きだよ」とがぜん注目。ドラムスのグレゴリー・ハッチンソンも、すごい暴れまくる演奏をしています。

ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音し、マルチチャンネルも製作

 録音はジャズ・ファンにはおなじみのルディ・ヴァン・ゲルダー。マルチ・チャンネルも2003年、ゲルダー自身によって製作されています。
 音はヴァン・ゲルダーらしく、60年代ジャズぽい、楽器からガッシリと掴みとった音。「高音質にまとめよう」なんて意識はなさそうで、レンガのように重たく、厚い音です。
 まるでVUメーターの針がいつもレッドゾーンで鳴っているような感じ(もちろん音は割れていませんよ)。アナログのテイストが存分にある音です。
 特にすごいのはベースで、弓で弾いて「ゴリゴリ!」。指では「ブンブン!」。スピーカーがベースのボディになったように唸ります。

マルチチャンネルは、さらに“ゲルダー節”

 ゲルダー先生の製作したマルチ・チャンネルは、すごく凝っています。
 冒頭「イスファハン」はバラードで、ヘンダーソンのサックスとベースのデュオ。
 センター・スピーカーにサックス。ベースはリアで、向き合う感じです。フロントのL、Rスピーカーでさえ、音は微かなアンビエント音のみ。センター・スピーカーをフルに鳴らせてサックスにみたてます。

 そんなモノクロの世界から、一転、2曲目「ジョニー・カム・トゥリー」はカラフルな世界に。マルサレス、ハッチソンも参加して、スピーディなコンボの音が、リスニングルームに「パァー」と広がり、ビッグバンのような爽快感。ピアノは左サイドいっぱいに広がる。
 ゲルダーは、ジャズにありがちな無難なマルチでは満足せず、曲ごとに楽器配置を大胆に 動かします。
 「ブラッド・カット」ではピアノはリアに持ってきた。「レイン・チェック」では前方サックス、リアにドラムスでデュオ対決。
 「A列車でいこう」もサックスとドラムの編成。リアのドラムが延々とソロをやっているとき、前方のサックスがすごく小さく音で吹いているのがおかしい。そっと小節を数えているのだろうか。
 演奏よし、録音よし、マルチチャンネルよし。三位一体のジャズSACDです。

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ジョー・ヘンダーソンのSACD
B002GSXKSI ジョー・ヘンダーソン/Page One
名曲「ブルー・ボッサ」収録の初リーダー作。 ケニー・ドーハムとの名コンビによる哀愁あふれる演奏は彼の生涯最高傑作となった。 (Amazon)
New York Reunion
マッコイもいいが、ヘンダーソンもいいぞ、の演奏
SACDラボレビュー
2010.9.21