topaboutblogClaJazzpopsjpopselect
S
SACDhybrid マイルス・デイビス
ゲット・アップ・ウィズ・イット


MILES DAVIS
GET UP WITH IT
Stereo/Multi-ch
録音1970〜74年
国内盤、ソニーレコーズ
SACD専用ディスク2枚組

Amazon 

1㎝くらいの厚いプラケースに2枚収録。

ブックレットには、村井康司氏のライナーと曲解説(1996年のもの)。

メンバーは70年録音の「ホンキー・トンク」のキース・ジャレット、ビリー・コブハムから、74年のピート・コージー、レジー・ルカースまでさまざま。しかし全体は統一感がある。

『ビッチェズ・ブリュー』とならぶ、70年代マイルスの名作アルバム

 本作は、マイルスの70年〜74年までの録音を集めたダブル・アルバム。メンバーはいろいろですが、アルバムは統一感があります。
 発売当初は、当時亡くなったデューク・エリントンに捧げた、32分に及ぶ「He loved him madly」が話題を呼びました。
 この曲にひっぱられて、アルバムの印象は重いものになりがちですが、じっさいは個性的な素晴らしい曲ばかりです。『ビッチェズ・ブリュー』と同じくらい完成度のあるアルバム。編集のテオ・マセロの功績も大きいと思います。

DISK1の曲と音

「He loved him madly」。どよーんと始まるレクイエム的な雰囲気。死者の声も聞えてきそうな雰囲気の前半。後半、エイト・ビートが刻まれるところから、音の重なりが気持ちよい。SACDらしい気配を感じさせます。マイルスのワウワウ・ソロは物悲しい。

「Maiiysha」。『ジャック・ジョンソン』の「ライト・オフ」とならんで、70年代で最もポップなマイルスの曲でしょう。ラテン・リズムにフルートのソロ。妖しいメロディーが美しい。
 『アガルタ』収録の演奏よりもフォルムがキッチリしているのが、スタジオ録音らしいところ。音はふくよかに鳴ります。

「Honky Tonk」。もろブルースの曲。マイルスはオープン・トランペットで吹きまくります。

「Rated X」。このアルバムではマイルスがオルガンを弾くのも特徴。この曲では、コード進行だけのオルガンを、延々と弾きます。しかしバックは、コンガやタブラ、シタールなどが猛烈に疾走するポリ・リズム。この差がカッコいい。

DISK2の曲と音

「Calypso Frelimo」。個人的には名作だと思います。32分の大作で、急暖急の三部構成。この展開はプログレ・ファンも気にいるのではないか。
 まず速いテンポ。まるで抽象画のように、音を埋め尽くした空間。これだけ音がありながら、肌触りのいい音の出方。エレクトリック・マイルスでありながら、SACDらしい空気感も感じられると思います。

 中間の静かなところでパーカーッションの小物が登場。SACDファンお待ちかねの、もろ「空気感」のある音です。
 再びテンポアップ。マイルスがワウワウで、ソロを吹きまくる。オーヴァー・ダビングぽいが、それでも音の重なりが気持ちいい。所によりヒスノイズが丸出し、それでも「音の出方はやはりSACD」の一品。

「Red China Blues」。ファンキーなブルース。前奏のあとボブ・ディランが歌いだしてもおかしくないほど、ストレートなブルース演奏。マイルスがワウワウ・トランペットを吹く。ブラス・セクションも加わり、これも音の重なり方や、出方が気もちいいです。

「Mtume」。パーカッション奏者ムトゥーメをヒューチャーした曲ですが、ギター、トランペットもすごいと思います。

「Billy Preston」。ベース・ラインがとてもファンキー。その上に展開するマイルスのトランペットとオルガンもカッコいい。
 見通しのいいバンド音。本アルバムでもっともSACDらしい空気感を感じたトラックでした。

Amazon 

マイルス・デイビスのSACDレビュー
〈特集〉マイルス・デイビス/ハイブリッド盤一部
マイルスのコロムビア時代の代表作10点が、ハイブリッド盤で再発売。
10点のレビューをまとめてご紹介します。
〈特集〉マイルス・デイビス/50年代~60年代 一部すべて
50年代のプレスティッジのマラソンセッション盤と、
60年代、コロンビア時代の作品(SACD専用ディスク)をご紹介。
〈特集〉マイルス・デイビス/70年代~80年代
70年代のマイルスと、80年代カムバック後の作品。SACD専用ディスク。
マイルス・デイビス/クッキン
プレスティッジ時代、マラソンセッションの1枚
Amazon
マイルス・デイビス/マイルス・アヘッド
ギル・エヴァンスとの共演第1作。ギルのアレンジが、カッコよくビッグ・バンドを鳴らす
Amazon
マイルス・デイビス/カインド・オブ・ブルー
マイルスのみならずジャズの名盤。ハイブリッド盤。マルチチャンネルも収録
Amazon
マイルス・デイビス/フォア&モア
残りの人生、音にウンヌン言わずマイルスを聴け。ハイブリッド盤再発
Amazon
マイルス・デイヴィス/イン・ア・サイレント・ウェイ
SACDステレオは文句なし、マルチに最初戸惑ったが…
Amazon
マイルス・デイビス/ビッチェズ・ブリュー
ジャズの歴史を変えた本作もSACDで効果ありだと思う。
Amazon
マイルス・デイビス/ジャック・ジョンソン
マクラフリンのギターが最高にカッコいい、ロックなマイルス
Amazon
マイルス・デイビス/オン・ザ・コーナー
ジャズを越え、音楽シーン全般までを超えた、マイルスの傑作
Amazon
ライヴ・イヴル マイルス・デイビス/ライヴ・イヴル
エレクトリック・マイルスの本領発揮ライヴ
Amazon
マイルス・デイビス/ダーク・メイガス
電化マイルスの到達点を目差す、74年ライヴのSACD化
Amazon
マイルス・デイビス/ゲット・アップ・ウィズ・イット
『ビッチェズ・ブリュー』とならぶ、70年代マイルスの名作
Amazon
マイルス・デイビス/ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン
沈黙からの復帰第1作、蘇ったマイルスの新しいジャズ
Amazon
マイルス・デイビス/ユア・アンダー・アレスト
80年代のマイルス、ポップスへ接近したアルバム
Amazon
2011.8.5