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SACDhybrid マイルス・デイビス  オン・ザ・コーナー【2006年DSDマスタリング】


Miles Davis
On The Corner
Hybrid
1972年作品
国内盤、ソニーミュージック
【2006年DSDマスタリング】
SACDハイブリッド

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普通のプラケースにブックレット。

ブックレットには日本語で、2000年4月筆のボブ・ベルデンの作品解説ライナー(わりと長め)。
デイヴ・リーブマン「〈オン・ザ・コーナー〉を語る」という文章。

マイルス、ハンコックやリーヴマン、マクラフリンの白黒写真1枚づつ。

アナログ・レコードの見開きにあったイラストは、透明ディスクトレイの下に見える。

ジャズを越え、音楽シーン全般までを超えた、マイルスの傑作

 『オン・ザ・コーナー』は間違いなく、マイルス・デイヴィスの全作品の中で、一番の“問題作”でしょう。
 しかし現在は、クラブ・ミュージック、ヒップホップ・シーンから、多大な支持を受けているアルバムになっています。

 発表当時、この作品の放った“違和感”は、とても言葉では伝えられないでしょう。僕も、高校1年の時、LPのジャケットを見て「絶対、聴く気がしない!」と思ったので、偉そうなことはいえません。
 このアルバムをけなしたのは批評家だけではありません。コアなジャズ・ファン、そして僕のようなロック・ファンでさえ、みんな理解できなかったと思います。それほどまで先進的な作品でした。
 もちろん今は大好きなアルバムです。自戒もこめて、『オン・ザ・コーナー』を、SACDハイブリッドで聴いてみました。

すさまじいリズム、襲いかかるパーカッション

 1曲目の「オン・ザ・コーナー」から、すさまじいリズム。
 ハイハットの刻む16ビートが、強烈に襲いかかります。それが、テープのループ操作でしょう、延々と同じことを繰り返すのです。
 その上に、タブラ、コンガなどのパーカッションが遠慮なしに重なり、さらにマイルスやマクラフリンのソロが入り、ファンキーなポリリズムを作りだしています。
 『ビッチェズ・ブリュー』から『アガルタ』までの、エレクトリック・マイルスが好きな人でも、この音楽にはビックリすると思います。この時期のマイルスの中でも、異色のサウンド。
 しかし、これがカッコイイ! こちらも、ようやくマイルスに追いついた気がします。

さらにファンクにせめる後半

 LPのB面にあたる「ブラック・サテン」は、当時シングルカットされただけに、ファンキーでポップな仕上がりです。
 重低音系の刻みリズムがカッコいい。たとえると、ハービー・ハンコック『ヘッド・ハンターズ』の、「ウォータ・メロン・マン」のような、「延々刻み系」ファンク・ジャズですが、「ウォーター・メロン・マン」ほど、クールでもエクセレントでもないのがマイルス。爆発するリズムを、綺麗にまとめるようなことはしていません。
 LPのB面にあたるトラックも、喧噪のごった煮でまとめたファンクです。しかし、ハンド・クラップ(手拍子)も加えられているなど、今聴くと、1972年録音とは思えない革新的なサウンドだと思います。

SACDの音

 『オン・ザ・コーナー』は、いやでもリズムが耳に襲いかかるのですが、SACDの太めの音では、たくさんのリズム楽器が、「耳障りでない音」で聴けます。リズムは強烈なのですが、「音自体は心地よい」のです。

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『オン・ザ・コーナー』(SACD専用ディスク)ハイブリッド盤以前にリリースしていたSACD専用盤

マイルス・デイビスのSACDハイブリッド・シリーズ
ラウンド・アバウト・ミッドナイト (モノラル)
1955-56年録音。マイルスのCBS初録音。ミュート・トランペットはマイルスの名刺代わり。メロディアスな曲が多く、誰にもマネできないマイルスの歌心が楽しめる作品。これを聴くと、マイルスは本質的に上品で、オシャレな人だというのがわかる。レッド・ガーランド(p)のゴージャズなピアノもいい。初心者は間違いなく、聞き込んだ人ならなおさら、シブいジャズの時間がすごせるアルバム。モノラルだが問題なし。ジャズは初めて、マイルスは初めての人にはこのあたりからがオススメです。
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マイルストーンズ
1958年録音。最高にキャッチーなタイトル曲を収録。セクステットになった演奏は、前作『ラウンド~』より、インプロビゼーションが、より抽象的で広がりがでているのが分かる。モード奏法は実はここから部分的に始まっていた、とも。とにかく、まるで筋肉運動のように、元気ハツラツなジャズ・アルバムです。
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スケッチ・オブ・スペイン
1959-60年録音。ギル・エヴァンスとの共演盤のなかの1枚。他のアルバムと違って、マイルスの音楽色はうすいのが特色(ま、共演盤だから)。マイルスは、いちトランペッターとして、ギル・エヴァンスのジャズ・オーケストラをバックに、熱くせつせつと歌い上げる。ギル・エヴァンスのオーケストラ・アレンジも、興味のある人には聴き所でしょう。フラメンコ調のアレンジも多いです。ロドリーゴの原曲をもとにした「アランフェス協奏曲」が有名だが、最後の曲「ソレア」も快演だと思う。
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カインド・オブ・ブルー
1959年録音。ジャズの歴史を変えた名盤。ここでの演奏は、深みと幽玄のきわみです。『マイルストーンズ』ではアダレイ(a.sax)に押され気味だったコルトレーン(t.sax)が大躍進している。オーディオ的にもSACDの音が楽しめる1枚と思う。2002年版マルチチャンネルの音の定位位置はステレオ・ヴァージョンと同じ(と思う)。しかしリアに残響成分を入れることで、演奏がステレオ・ヴァージョンより立体的に感じる。自分の部屋にマイルスやコルトレーンが来ている感じ、だろうか。SA-CDラボ♪♪レビュー
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マイ・ファニー・ヴァレンタイン
1961年録音。ジョン・コルトレーンが退団して、60年代の黄金クアルテットができるまでの、過渡期に録音されたアルバム。メンバーが固定しないため、この時期はライヴ盤が多いのだが、これは珍しいスタジオ録音。コルトレーンが2曲ゲストで参加しているのが二人の最後の共演。このコルトレーンがいい。その存在感はマイルスもしのぐほどで、マイルスも「セイチョウシタナア…」とあのしゃがれた声で喜んだだろうか。マイルスのミュートがさえるタイトル曲「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」はやっぱり最高です。
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マイ・ファニー・ヴァレンタイン
1964年録音。NYリンカーンセンターのライヴ録音。バラード曲を集めたアルバムと紹介されることも多いが、演奏は単純なものでなく、ハービー(p)、ロン(b)、トニー(ds)の変貌自在なリズムセクションが、ラテン風ヘ、アップテンポヘと自由に曲調を変えていく、聴き応え十分の演奏。マイルスの抒情性とパワフルなトランペットも素晴らしく、買ってソンのない1枚。音質もSACDの空気感に「お、なんかCDとちがう」と感じてもらえる(と思うのだが)。
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フォア&モア
1964年録音。『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』と同日のライヴだが、こちらはアップテンポの曲で構成したアルバム。文字通り超スピードで突っ走る演奏は最高。この時期のライヴごとに変貌する「ソー・ホワット」など、スタジオ録音にはない白熱の演奏が聴けます。あと、ジョージ・コールマンのT.saxもいいです。アナログの厚みが、SACDでかなり出ていると思います。SA-CDラボ♪♪レビュー
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イン・ア・サイレント・ウェイ
1969年録音。『フォア&モア』から数作の探求をへて、とうとう電気楽器を導入した作品。とはいってもアコースティックな雰囲気漂うサウンドで、ヒーリング感に満ちており、マイルスの作品の中でも独特の印象をはなつ。ショーターのS.SaxもSACDで暖かみが感じられるのではないか。2002年版マルチチャンネルも収録。リア側にザビヌルのオルガン、ハンコックのエレピが位置する。SA-CDラボ♪♪レビュー
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ビッチェズ・ブリュー
1969年録音。翌70年にLP2枚組で発売された本作は、ジャズ史上最大の問題作としてあまりにも有名。それまでの伝統的なジャズとは、かなりかけ離れたフォームだと思う反面、マイルスのトランペット・プレイ自体は、それほど変ってはおらず「やはりジャズだ」とも思えるし、えーいャ、ジズとかロックとか、関係なく聴いちゃいましょう。SACDラボ♪♪レビュー
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オン・ザ・コーナー
1972年録音。『ビッチェズ・ブリュー』で本格的にエレクトリック・ジャズに突入したマイルス。現在の視点ではエレクトリックというより、ファンクで、ヒップなリズムの印象が強烈な作品。リズムのテープ・ループや、編集を多用。エレピ、シンセサイザー、タブラ、シタールの使用など、幾重にも重なり合った音が、ファンクなリズムとともにうねる。ロックリスナーには『ビッチェズ・ブリュー』より、こちらのがオススメ。「ブラック・サテン」は最高にカッコいいマイルスでしょう。
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その他のマイルス・デイビスのSACD
マイルス・デイビス/50~60年代のSACD
SACD専用ディスクの国内盤、輸入盤

2011.2.2