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SACDhybrid ハービー・ハンコック ヘッド・ハンターズ


HERBIE HANCOCK
HEAD HUNTERS
Hybrid Stereo/Multi-ch
国内盤、ソニーミュージック
SACDハイブリッド

Amazon

普通のプラケース。
解説書は四つ折りの1枚。
97年、CD発売時の村上太一氏のライナーを、一部修正して再掲載。

『ヘッド・ハンターズ』が、マルチ収録のハイブリッド盤で再発

 『ヘッド・ハンターズ』は1974年に発売された大ヒット作。フュージョンの代表作であると同時に、ロック・ファンがジャズにブッ飛んだ正真正銘の一枚です。
 これだけの名盤ですから、SACD専用ディスクとして発売されていましたが、2007年に再DSDマスタリング。マルチチャンネルも新たに制作され、SACDハイブリッド盤で発売されました。ハービー・ハンコックのハイブリッド・シリーズでマルチチャンネルがあるのは本作だけです。

SACD 2ch、「カメレオン」でも、音の良さが分かる

 まずCD層を聴いてみました。名作「カメレオン」。
 CDの音はクリアで、低音の迫力もあります。これはこれで申し分ない音に思えますが、SACD層を聴いてしまうと、やはり音の違いがハッキリします。
  SACD2chでは中域の情報量が増え、音のエッジもまろやです。サックスの音もSACDのほうが濃い。
 音を砂袋にたとえたら、中の砂が格段に増えた感じです。「カメレオン」のようなエリクトリック・ファンクでも、SACDの良さが分かりました。
 喉もとに突き刺さるようなリズムは、レンガで積み上げたようにタイトで、独特の“乾いた空間”がカッコいい。その上をハンコックのシンセとフェンダー・ローズ、ベニー・モウピンのサックスが走る。

マルチチャンネルは“瑞々しい”3次元空間

 マルチチャンネルでは“乾いた”2次元音像が、“瑞々しい”3次元に変貌しました。バスドラ、スネアなど、リズム隊は2chと同じ音質で、前方に変わらず。
 しかしその音も、ちょっと艶が出たように感じます。音自体に奥行き感が生まれたせいでしょうか。
  2chでは、小リバーブだった音が、マルチチャンネルでは、深いリヴァーブになっているところがあります。個人的には「カメレオン」の一部が、ちょっと深い気もしますが、その他ではOKです。パーカッションもうすく両サイドに広がっています。
 2chでも頑張って左右に振っていたハンコックのシンセやフェンダーローズは、もちろん360度にグイグイ回されるけれど、大げさな音色ではないのでグルグル感はあまりありません。

SACD2chとマルチチャンネル、どちらもいい

 オリジナル2chは、もちろん素晴らしいです。マルチチャンネルは、その「拡大版」としてとらえると、ディスク1枚で両方を聴けるのがうれしい。2chとマルチチャンネル、気分で好きな方を聴く事にしています。
 ただ、終曲の「ヴェイン・メルター」だけは、マルチチャンネルが秀逸です。アナログLP時代、アルバム中、唯一のゆったりとしたこの曲は退屈に思われ、聴かずに針を上げていたものですが、サラウンドで生まれ変わりました。
 音楽はオーロラのようにリスニングルームに広がり、“音のカーテン”を張り巡ぐらせたよう。最後まで聴きいってしまうのです。

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ハービー・ハンコック/V.S.O.PのハイブリッドSACD
2007年最新DSDマスタリング/通常プラケース(2枚組も1枚ものプラケース)
洪水 ライヴ・イン・ジャパン'75
『ヘッド・ハンターズ』をリリースしての75年来日ライヴ。アコースティックから始まる「処女航海」から、ファンク色抜群の曲にコンサートは進む。スタジオ録音以上のノリです。SACD化されない『突撃』の名曲「バタフライ」も収録。ヘッド・ハンターズ期のアルバムからのベスト的な選曲。
フューチャー・ショック
83年発表。初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。今ではあたりまえのように存在するスクラッチが、強烈に目の前に現れたのがこのアルバムだった。現代から見れば、古くさくも聴こえるテクノロジー・サウンドにも、ハービー・ハンコックのセンスが光る。グラミー賞受賞の「ロックイット」収録。
SACDラボレビュー
ニューボートの追想(V.S.O.P)2枚組
76年ニューポート・ジャズ・フェスティバルにおいて、ハービーの「60年代」「70年代初頭セクステット」「エレクトリック・ファンク期」を、おのおのバンドで演奏するという企画を収録したライヴ。
SACDラボレビュー
ライヴ・イン・USA/V.S.O.P.ザ・クインテット
『ニューポートの追想』で1回だけのつもりだったV.S.O.P.だが、大人気のためツアーをした77年の全米ライヴ。このクインテット、マイルスを引いた「引き算」クインテットと思ったら大間違い、才能溢れる5人の「たし算」クインテットです。マイルス・クインテットとは別の魅力を発見。
テンペスト・イン・ザ・コロシアム/V.S.O.P.ザ・クインテット
V.S.O.P.ザ・クインテットの77年、東京田園コロシアム「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」での演奏。V.S.O.P.のライヴ盤はどれも甲乙つけがたい。他のライヴ盤でも言えるのだけど、ハービーのプレイは本当にユニークで刺激的。同じくトニー・ウィリアムスのドラムも。そしてロン・カーターは一途にベースを弾いて負けていません。もちろんショーターもです。
ライヴ・アンダー・ザ・スカイ伝説/V.S.O.P.ザ・クインテット2枚組
79年の東京田園コロシアム、豪雨の中での伝説のライヴ。ライブ盤はどれもハービーのMCに味があるが、ここでは雨を気にして観客にジョークを飛ばしたり、機材濡れによる長い中断をMCでもたせたりと、スゴイ演奏の間に、張りきってMCしています。それだけに、観客と一体となった演奏が聴けます。
ファイヴ・スターズ/V.S.O.P.ザ・クインテット
79年来日公演『ライヴ・アンダー・ザ・スカイ伝説』演奏の3日後に、東京のソニーのスタジオでレコーディングされたV.S.O.P.唯一のスタジオアルバム。聴いてみるとスタジオもライヴとかわらない。どっちも凄いので、テンションの差は感じないですね。これもできればコレクションにいれたいものです。
2010.12.22