Emi Fujita
camomile Best Audio
〈音匠仕様〉
国内盤、ポニーキャニオン
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カモミール・シリーズ3作から17曲を選曲したベスト。それを再リミックスしたのが本SACD。
通常プラケースにブックレット。各歌詞には藤田さん自身による解説。ブックレット末には製作者によるSACD化の技術解説、SACD2ch、マルチchの聴き所が書いてあります。
これはすごい、緑色のディスク!
このSACDのディスクは緑色になっています。盤面に当たった赤色レーザーは散乱して、それが音質を悪くするそうです。緑色の特色インクは、それを吸収する役目。これはソニーの“音匠”と呼ばれる技術だそうですが、金井さんは、「それをこのSACDにもつぎこんだ」とのこと。緑色もいろいろこだわったそうで、緑色のサンプルがたくさんありました。
取材の時、金井さんは、出来上がってきた最終チェックのSACDを使って、緑色のディスクと、緑色に塗られていないディスクの聴き比べをしてくれました。同じ曲です。
聴いてみてビックリ、あきらかに音がちがうのです。音はやわらかくなり、情報量が増えているのがわかる。
今まで、「こういうこだわりって、気持ちの問題かも」なんて正直思っていたのですが、ここまでハッキリと違いが聴き取れてしまうのは自分でもビックリ。「もう、全部のSACDを緑にしてくれぇー」と思ったほどです。
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歌もいい、オーディオファン必聴のSACD
この『カモミール・ベスト・オーディオ』は、日本だけでなく香港などでも大人気のアーティスト藤田恵美さんのベスト盤。発売日からすごく売れているようで、オーディオ的にも大変注目されているSACDです(5万枚売れたとか!)。
なので「今回はオーディオ的にせまってみよう」と思っていたのですが、聴いてみると、それ以前に藤田恵美さんの歌がすごくいいのでビックリしました。
冒頭のドン・マックリーン作「アンド・アイ・ラヴ・ユー・ソー」から、やさしく包み込むような歌い方に魅惑されました。続く、ビー・ジーズの「若葉のころ」、これもいいナア……。
たとえると「母親の膝枕のようなぬくもり」でしょうか。これは魅了されてしまう人が多いと思いますね。アジアで大人気というのもわかります。
アルバムはしっとりとしたアルペジオ系の曲で構成されていますが、いわゆるイージー・リスニングではなく、「深く感じるアルバム」です。
ソニーの金井さんが、制作に参加
このSACDには、サウンドクォリティーアドバイザーとして、ソニーの技術者である金井隆さんが参加しています。
金井さんが関わっただけあって、オーディオ的仕上がりは素晴らしいです。ヴォーカルの再現性など、SACDステレオでの音質は文句なし。
マルチチャンネルのこだわりは、もっとすごい。先日『SACDジャーナル』で金井さんに取材した時に、お話をうかがいました。
一般にクラシックのマルチチャンネルでは、演奏空間を直接録音するため、オーケストラのひな壇奏者など「音源の高さ」も再現できるのですが、ポップスのマルチチャンネルでは、トラックを重ねて作るため「音源の高さ」を再現するのはむずかしかった、そうです。
ポップスで「音源の高さ」を再現するマルチチャンネル
ですが金井さんは、このSACDマルチチャンネルでそれを実現しています。
もっとも分かりやすい「What a Wanderful Warld」では、トランペットが左上にフィードル(ヴァイオリン)が右上から聴こえます。「Best of My Life」では涼やかなパーカッションが星のように頭上にあらわれます。
ただしどれも大げさなものではなく、曲によって繊細に配置されているのがわかります。あくまで音楽中心なのです。
金井さんは、音楽が後ろからも鳴るサラウンドではなく、後方はアンビエント音だけにして、前方に楽器を配置するマルチにした、とのこと。「高さ」を得たマルチチャンネルは、本当に新鮮な音楽体験でした。
試聴はソニーの立派な試聴ルームだったので、「自分の家ではどうか…」と若干心配になりましたが、フロントとリアでスピーカーがちがう我が家でも、同じように聴けました。や、やったあ。
藤田さんの歌と、金井さんのこだわりの音。オススメです。
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