topaboutblogClajazzpopsJpopselect
HYPS
Chaotic Planet (ハイエンドパッケージセット)

Hybrid Stereo/Multi-ch
国内盤、ポニーキャニオン
3枚セット(内訳は以下のとおり)
・SACD〈音匠仕様〉
 2ch、Multi-ch、CD
・HQCD
・アナログレコード(200g重量盤)

Amazon

アナログレコードサイズの紙箱に、3フォーマットのディスクとブックレットを収納(右写真)。

SACD、HQCD、アナログレコード、究極3フォーマットセット

 HYPSとは、女性パーカッション奏者はたけやま裕を中心とした6人組ユニットです。パーカッション以外は、ヴァイオリン、ヴィブラフォン、サックス、キーボード、ベースという編成。
 ここに紹介する『Chaotic Planet』〈ハイエンドパッケージセット〉は、HYPSがスタジオ&ホール録音した同じ音源をSACD(2ch&Multi-ch、音匠仕様)、HQCDアナログレコードの3枚に収録したセットです(曲順はSACDと、HQCD/アナログではちがいます)。
  しかも録音からマスタリングまで、SACDにはデジタル行程、HQCDとアナログレコードにはアナログ行程と使い分けて制作された、21世紀のオーディオならではの究極セットと言えます。
 4月下旬その試聴会が、制作にかかわったソニーの金井氏のもとでおこなわれたので、その模様を伝えながらレビューします。

SACDマルチチャンネルで聴く、打楽器の生命感あふれる音

 試聴はSACDのマルチチャンネルで行われました(最後にHQCD、アナログレコードとの聴き比べあり)。マルチチャンネルは四方に楽器が配置されるマルチではなく、前方の楽器音を立体的に表現するマルチチャンネルです。

 「Scarborough Fair」。ホール録音で、打楽器(ダラブッカ、ティンシャ)のアコースティック音とホールトーンの響きの解け合った響きが美しい。はたけやま裕は、いろいろなパーカッションを、フラメンコ風変拍子にのせて、足まで使い一度に演奏していきます。

 「Afro Blue」はスタジオ録音(HQCD/アナログレコードでは1曲目になる)。今回の録音は一発録りが多いそうですが、これもそう。打楽器の音が瑞々しい。

 「蒼い風」も一発録りのホール録音。アイルランドのバウロンという打楽器の低音が生々しいです。はたけやま裕は足に鈴もつけ演奏。エレファントベルやウィンドチャイムも奏でられる。左手にヴィブラフォン奏者、右手にヴァイオリン奏者、各音のアコースティックな響き合いがいい。マルチチャンネルですので音は宙に浮き、まるでそこに奏者がいるような、分厚い立体音になります。

 「You II」は、はたけやま裕の打楽器ソロ。周りに沢山の打楽器を配置しての即興演奏です。ブラジルの打楽器ヘボロ、あとボンゴ、コンガ、ホイッスル、ティンバレスはあえて手で叩く。「この曲は2〜3db、ボリュームを上げて聴いてください」と金井さん。普通の楽器ならボリュームを上げるとうるさくなるのですが、打楽器では音の瞬発力、生命力が増して、すごく気持ちいいのです。

 「Chaotic Planet」はHYPSの6人の演奏。ラヴェルの「ボレロ」のリズムに、サティの「グノシエンヌ」を合わせた意欲作。クライマックスで、直径2mのシンフォニックゴングが、広大な音場で鳴り響くのも聞きものです。

 「Misty Mornig」は朝もやの雰囲気のある曲。「この曲は再生が難しいんだよね」と金井さん。再生音が固くなりがち、だとか。「この曲が愛らしく鳴らせたら、すばらしいシステムです。オーディオチェックに使える曲です」とのこと。

SACD、HQCD、アナログレコードの聴き比べ

 最後に「Speak Low」で3フォーマットの聴き比べをしました。この曲はHYPSがワンテイクで録音完了した。ここでの打楽器はドラムセットのようなサウンドで演奏されています。

 最初はアナログレコードで再生。プレーヤーはヤマハGT-2000、カートリッジはSPU(あと、ウェイトなど金井さん特注の改造などあり)。シンバルの鳴り方などのびやかな音です。アナログの音の良さを堪能です。
 続くHQCDでの再生。これもアナログ録音らしい(音源はアナログレコードと同じアナログ録音)アナログレコードに準ずる音でした。
 そして、最後にSACDマルチチャンネル。同じ奏者が、同じ配置で目の前に現れるとはいえ、音の存在感がやはり違います。
 アナログレコードやHQCDが素晴らしいオーディオ音(もちろん良い意味です)としたら、SACDマルチチャンネルは、音というより“物”とでも言いましょうか、存在として目の前にいる感じです。それに加えて、HQCDやアナログレコードとは比較にならないくらい分厚い音で鳴ってくれるのですから、オーディオを超えて生楽器に一番近い印象を持ちました。やっぱりいいなあ。

聴き終えて。まとめ。

 いろいろ聴き比べてきましたが、この〈ハイエンドパッケージセット〉は、「同じ音源をそれぞれのフォーマットで聴いて楽しもう」というコンセプトです。それぞれの持ち味をじっくり味わえる希有のセットと言えましょう。
 このセットは500部限定版です。のちに通常版SACDも発売されるそうですが、アナログレコードとHQCDはこの〈ハイエンドパッケージセット〉のみでのリリースだそうです。
 また通常版SACDでは、マルチチャンネル層は本セットのSACDと同じですが、SACD2ch層は一部音源が違うそうです(なんでも、一部アナログ音源からの差し替えになるとか、より曲に合った差し替え、とのこと)。
 本セットには、車のカタログのような、奇麗なアナログレコードサイズのブックレットが付いています。はたけやま裕による解説の下には、各曲ごとに録音時のセッティング図まで載せられています。これもオーディオファイルにはこたえられないでしょう。

Amazonで見る
>ポニーキャニオンHP HYPS
>はたけやま裕 オフィシャルホームページ

2009.4.29