Midori Karashima Bouquet Garni
国内盤、Sony Music Direct
SACDハイブリッド
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ブックレットには歌詞と、ジャケットのセッションと思われる写真少々。
「ブーケカルニ」は“香草の束”、という意味。
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東日本大震災のさなか、心癒されたアルバム
僕がこのSACDをよく聴いたのは発売から4年もたった2011年、東日本大震災の時だった。
2011年3月11日、大津波が人々の暮らしを破壊し、福島原発の事故が起きた直後は、大好きだった音楽さえ聴く気になれない日々が続いた。
数えきれないほどの余震と停電、原発事故がますます悪化する恐怖なかで、唯一この『Bouquet Garni~ブーケガルニ~』だけは聴いていられた、というか聴いていたかった(さすがに危機の最中ではオーディオ・システムではなく、iPodで聴いていたが)。
このアルバムに収められたのは偶然だろうが、最後の曲「千の風になって」では震災で犠牲になられた多くの方々を思い言葉もなかった。
新作にヒット曲の再録をまぜての、珠玉のバラードアルバム
本作はシンガー・ソングライター、辛島美登里の14枚目のアルバム。2007年にSACDハイブリッド盤でリリースされた。
最後に収められた「千の風になって」以外は、全曲、辛島美登里の作詞作曲、新作にまじり、大ヒット曲「サイレント・イヴ」ア・カペラ版、「あなたの愛になりたい」といった旧作の再録も含まれている。
彼方からやってきたような曲「空の青 海の青 風の青」でスタートするアルバムは、珠玉のバラードが満載。
「ただそばにいて」「抱きしめて」「睡蓮」など、せつせつと歌い上げるメロディは「キュッ」っと胸にくる。
もちろん辛島美登里のヴォーカルだからこそ味わいがあるのだと思う。「シアワセツカモウ」は、80年代のガールズ・ポップス風オシャレ・ボサノバであるが、これがアルバムを明るくひきしめてくれる。
愛聴盤だからSACDで聴きたい
オーディオ的には辛島美登里の声は、どちらかといえば細め、高音系だ。バンド音も、生ギターやトランペット、ストリングスがあるものの、コンプをかけた感じもあり、またプログラミングも多用されており、「SACDの恩恵はあるのかな?」と思っていたが、それでもやっぱりSACDで聴きたいアルバムだ。
SACDの音は、ちょうど和紙に描かれた文字のように、暖かみのあるエッジ音で、空間ににじんでいる感じがする。
アコースティックな音でのオーディオ的聴き所は、最後の2トラック「サイレント・イブ」と「千の風になって」だろう。「サイレント・イブ」はBaby booのアカペラが、「千の風になって」ではハープの音、ヴォーカルで、SACDの音の柔らかさを感じた。
文字通り愛聴盤。震災後も繰り返し繰り返し聴いているアルバムなので、SACDで聴けることがありがたい。
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2011.4.1(後年加筆)
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