今井美樹 Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics- アナログレコード2枚組
45回転/180g 重量盤/ステレオサウンド社独占販売品
文・牧野良幸
アナログレコードの人気は今や珍しくないが、最近海外でも国内でも確実に増えてきたのが45回転のLPだ。数年前は“180グラム重量盤”という言葉だけでワクワクしたものであるが、今や“45回転LP”という言葉にワクワクする。
実際、45回転LPの音質は素晴らしいと思う。33回転LPとは一線を画す伸びやかな音。アナログレコードの弱点であったひずみもほとんど感じない。広々とした溝を、高速で刻むレコード針を想像しただけで、水泳の北島康介選手ではないが「ちょー、キモチいい」と言いたくなる。
そんな究極のアナログレコードとも思われる45回転LPが、株式会社ステレオサウンドからまた一つ出た。今井美樹の『Dialogue- Miki Imai Sings Yuming Classics -』である。
ステレオサウンドはこの9月にSACDシングルレイヤーで『Dialogue- Miki Imai Sings Yuming Classics -』を発売している。オリジナルはユーミンの曲を今井美樹がカヴァーした2013年の作品だ。
SACDはソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二氏がSACDにふさわしいマスタリングをしたが、今回は日本コロムビアのチーフエンジニアである武沢 茂氏がアナログレコードにふさわしいマスタリングを施し、ノイマン製SAL74Bカッティングアンプ、VMS70カッティングレース、SX74カッターヘッドなどを駆使してカッティングをしている。
マスター自体はSACDと同じデジタル音源(96kHz/24bit)であるが、武沢氏がアナログLPのフォーマットにふさわしいマスタリングを施した上でラッカー盤を刻んだところが心強い。
さっそく45回転lPを聴いてみよう。ちなみに使用システムはターンテーブルがガラード301、カートリッジがオルトフォンSPU#1E、トーンアームがSMEである。
針を落とすと静寂から音が現れる。これを聴くにつけ、もう“アナログらしい温かみのある音”という懐古趣味のレベルではなく、本当に高音質なメディアになったと思う。
期待どおり、音の出方は45回転LPらしく非常にスムーズ。伸びやかでエネルギー感がある。
一番印象的だったのはヴォーカルで、今井美樹の歌声がくっきりと浮かび上がり存在感がある。
片面に3曲しか入れないのだから、内周を避けてカッティングする方法もあったのに、このレコードでは内周まで広く使ってカッティングしてある。
そうなると気になるのが内周でのひずみであるが、それがこの45回転LPでは再内周になってもひずみが感じられない。外周での伸びやかで、ひずみのない音を内周でもキープしているのだから驚いた。33回転だと高音質盤でも内周は苦戦することがあるのに。この余裕の再生力も45回転の魅力だ。カッティングの素晴らしさも、もちろんあるだろう。
片面に3曲というのも聴きやすい。
今の時代、CDで(またSACDでも)12曲を連続して聴くのは骨の折れる時間である。しかし45回転LPだと3曲/3曲/3曲/3曲と区切られているので聴きやすい。
「そんなに細切れで、落ち着いて聴けるの?」と思われる方もいるかもしれないが、これくらいがちょうどいい。3曲聴き終わると「よっこらしょ」と腰をあげ、もう1面、もう1面とつい最後まで聴くことができる。伸びやかな良い音だから、つい「もう少し」と求めてしまうのだろう。こんなところも45回転LPの楽しいところである。
収録曲
Disc-1
Side A
1.卒業写真*(『COBALT HOUR』1975年)
2.中央フリーウェイ*(『14番目の月』 1976年)
3.あの日にかえりたい*(シングル 1975年)
Disc-2
Side C
1.ようこそ輝く時間へ(『PEARL PIERCE』1982年)
2.霧雨で見えない(『ダイアモンドダストが消えぬまに』1987年)
3.青春のリグレット(『DA・DI・DA』 1985年)
Side D
1.青いエアメイル(『OLIVE』 1979年)
2.手のひらの東京タワー(『昨晩お会いしましょう』1981年)
3.私を忘れる頃(『VOYAGER』1983年)
作詞・作曲 松任谷由実(*印の4曲は荒井由実名義)
編曲:サイモン・ヘイル(A面2曲目、C面1曲目を除く10曲)/インコグニート(A面2曲目、C面1曲目)
2019年11月20日
今井美樹 Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics- アナログレコード2枚組
45回転/180g 重量盤/ステレオサウンド社独占販売品