topaboutblogClassicjazzPopsjpopselect
S
ザ・ビートルズ ビートルズ・モノ・ボックス


The Beatles
The Beatles in Mono
ボックスセット
EMI

Amazon(輸入盤)
Amazon(国内盤)

厚箱ケースに入れられた各アルバムの紙ジャケは美しい。カラーのブックレットには、解説とちょっとした写真が入る。

『ヘルプ』と『ラバー・ソウル』だけには、当時のオリジナル・ステレオ・ミックスも追加で入っている。

『モノ・マスターズ』のDISK2が貴重。「デイ・トリッパー」「ヘイ・ジュード」「アクロス・ザ・ユニバース」などのモノミックス、LP『イエロー・サブマリン』A面の「オール・トゥギャザー・ナウ」「ヘイ・ブルドッグ」などのモノミックスを収録。とてもアナログでは集められないヴァージョンばかり。

太いモノラルの音になって「いい仕事しています」

 そもそもビートルズの現役時代はモノラルが主流でした。このモノボックスにおさめられたモノラル・ヴァージョンがオリジナルな姿です(『イエロー・サブマリン』『アビイ・ロード』『レット・イット・ビー』はステレオミックスがオリジナル)。
 モノラル盤を楽しむポイントは大まかにいって2つです。

 1 ステレオ盤とは違うミックスを楽しむ(後期のアルバムで)
 2 ガッツのある音と音場にひたる

 もちろん2の理由がメインです。
 聴いてみるとモノ・ボックスは、CDながらいい仕事しているな、と思いました。「音が強くなった」気がします。針金のような芯のある音。ベースが全体的にいいですね。
 解像度は確実にアップしており、各音がくっきりと輪郭線を描いて分離しています。なので、いままで聴こえなかった部分が、聴こえたようところもありました。

 個人的に一番気に入ったのは「ホワイトアルバム」です。
 「ホワイトアルバム」は国内盤アナログレコード(ステレオ)の音が、どうも線が細い気がしていて不満だったのですが、このCDではパワフルになってくれて不満解消。
 とくにアナログの第2面にあたる曲は筋肉がついた曲に変身しています。「アイ・ウィル」などは、昔はレコードの隅のほうに可憐に咲いた花というイメージでしたが、このCDではビシッと主張する曲になっています(以前のもよいのだが)。

 UKオリジナル盤との聴きくらべ

 念のため、手持ちのUKオリジナル・レコードと聴きくらべてみました。もちろんモノラル盤です。プレーヤーはガラード301、トーンアームはSME、カートリッジは本格的モノラル専用の音のエジソンスピリッツ、フォノイコはSOUND PE50というシステム。アンプ、スピーカーは同じです。
 『プリーズ・プリーズ・ミー』はアナログのほうがいいですね。聴きくらべる前は、CDを「アナログ風な音だなあ」と思っていたのですが。 『ラバー・ソウル』はもうちょっとアナログのほうがいいはず、と期待していたのですが、それほどでもなかった。CDの健闘でしょうか。
 『フォー・セール』は実のところそれほど差を感じませんでした。盤質があまりよくないからか、は不明。
 『サージェント・ペパー』はCDを聴いていた分には、「さすがモノラル、音が太いぜ、迫力もあるぜ。健闘」と思っていたのですが、「ウィズ・イン・ユー、ウィズアウト・ユー」のタブラで、音の厚み、迫力ともアナログのが上、と差を感じてしまいました。
 『ホワイトアルバム』は先に書いたようにCDの音に、「ありがとう」と思っていたのですが、これもUKオリジナル盤を聴くと差を感じてしまいます。
 特にレコード第3面のハードな演奏では、アナログ(のモノラル)は「ビートルズってこんなハードな音出してたのか、ツェッペリンじゃん」とびっくり。説明的なハードロックから実質ハードロックへと音が変わりました。

コストパフォーマンスの高いボックスセット

 以上をふまえると「ビートルズのモノラルはやっぱりアナログのほうがいい」という結論になりそうですが、このモノボックスにかぎっては、結論はもうひとつあるべきだと思います。それは「モノボックスの音もあっていい」という結論ですね。理由は二つあります。
 まず「CDとアナログの音は別物」ということですね。高音質になっても「車線は一緒にならない」という現実。
 ですのでCDなりに、ベストをつくしたよい音だと評価したいと思います。
 21世紀風の新しいビートルズの音と言いましょうか、アナログ風の厚みのある音も再現していることだし、プレーヤー、アンプ、スピーカーにこだわって、「極上のビートルズのモノ」に仕上げるのも面白いと思います。

もしアナログで集めたらこの値段じゃすまない

 もう一つ、モノボックスが捨てがたい理由は、アナログでUKオリジナル盤を集めたら、予算はとてもモノボックス(輸入盤)の2万円代ではすまない、ということです。
 それも「ヘイ・ジュード」 や「ペープバック・ライター」などシングルのUKモノラル盤を集めるとしたら、途方もない値段と時間を必要とすることでしょう。
 さらにガラードのようなプレーヤーや、モノ専用カートリッジを購入する資金まで考えると、ゆうにモノボックスの20倍は超える予算は間違いのないところ。いかにモノボックスがコストパフォーマンスにすぐれているかがわかります。
 僕も、まだ持っていないUKオリジナル盤の『ア・ハード・デイズ・ナイト』や『リヴァルバー』は、「もうモノボックスでいいや」と思っております。オリジナル盤を集めるのに疲れていましたので、丁度いい機会でした(笑)。それくらいアナログの代用になるCDだと思うんですよね。

歴史的価値のあるセットは限定盤

 最後に紙ジャケのクオリティも書いておきます。
 日本で製造されたこの紙ジャケットは各オリジナル・アルバムの紙質を忠実に再現している「考古学的復元」といったものです。
 紙で作ったから「紙ジャケ」というレベルとは違います。紙ジャケには食指を動かさない僕も、これには手に取って「むむむ」と思ってしまいました。
 こんな歴史的価値をもったモノボックスを〈限定盤〉としてしまうアップルの方針には納得できませんが、(もしそれが本当なら)このボックスセットは絶対持っていたいアイテムであります。
 もう手に入れてしまったので〈限定盤〉として、まあ、お宝になるのもわるくないですが、そんな皮算用が吹っ飛ぶほど「モノラルのビートルズが聴けてよかった!」と満足しています。

Amazon(輸入盤)
Amazon(国内盤)

ビートルズのリマスター盤
The Beatles (Long Card Box With Bonus DVD) The Beatles [USB]
2010.2.1