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ジェネシス
ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ(眩惑のブロードウェイ)

GENESIS
THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY
Hybrid Stereo/Multi-ch
輸入盤、3枚組
SACD2枚+DVD1枚

Amazon(国内盤・紙ジャケ仕様)

聴いたのはボックスセットの中のもの、国内盤とちがって紙ジャケではない。厚い表紙の本のような閉じである。本のよう、といっても、オリジナルについていたストーリー、歌詞がついているだけの簡単なもの。

ピーター・ガブリエル独壇場の、2枚組傑作

 1974年発表。ピーター・ガブリエル在籍最後の作品である本作は、ロックオペラのようなコンセプトアルバムです。
 ストーリーは、ニューヨーク、ブロードウェイのプエルトリカンの少年が時空間を飛び越えていろいろな世界、人物と出会うというもの。ピーター・ガブリエルの創造した幻想的な物語が、2枚組みの大作となって詰め込まれています。
 なので全編ピーター・ガブリエルの独壇場です。ヴォーカルとフルート(とタンバリン)を受けもつピーターが、他の屈指のテクニシャン・バンドメンバーをバッキングに使っているかのよう。存在感がデカイ。
 世界観がぶっ飛んでいるので、74年の作品でありながら、60年代のサイケデリックのような印象です。ピーター・ガブリエルの“脳内サイケデリック”な世界に連れられていくような感じ。
 もちろんサウンドはジェネシス独特の、ハイテクニック、アルペジオ、変拍子という70年代プログレ。それでいて80年代のサウンドを先取りした、ソリッドな所も感じるのです。

2chでは問題作でも、サラウンドではドンピシャ

 ジェネシスのSACDはどれもリマスターされ、ステレオ、マルチチャンネルとも再ミックスされたものですが、本作も音は最高に素晴らしい。そしてさらに素晴らしいのがマルチチャンネルです。
 本作は傑作と言われながらも、同時に問題作でありました。
「ピーター・ガブリエルが、やりたい放題」とか、「ピーターのご乱心」と揶揄されることも多かったわけです。
 確かにポップなヒット曲「Counting Out Time」、美しい「Carpet Crawlers」などあるのだけれど、自意識過剰な(?)効果音楽、めくるめく湧き出る曲想。これでは74年当時「やりすぎだよ」と思われても仕方ないでしょう。
 しかしサラウンドで聴くと、この「やりすぎ」がドンピシャなんです。サラウンドの器では、ぜんぜん「やりすぎ」ではありません。
 サラウンドのデザインがまた素晴らしい。
 前後左右に配置された音の、遠近感、動き、テクスチャア(たとえばレースのカーテンのように舞う音!)、どれもが繊細に作られているのがわかります。一連のジェネシスSACDの中でも一番の出来栄え、サラウンドも再創造であると思い知らされます。

DVDでは視覚的な『ブロードウェイ』が聴ける、観れる

 本作はSACDハイブリッド盤2枚のほかにDVDが1枚あります。
 DVDにはdts、ドルビーデジタルのアルバム音源を収録。これによってDVDプレーヤーでも、サラウンド環境があれば、本作をサラウンドで聴けます(それも2枚組みが一気に! SACDはオリジナルどおり2枚)。
 dtsで聴きましたが、充実の中低音、伸びる高音、なめらからサラウンドはSACDと互角、申し分なしです。これで「音が良くない」という人はまずいないでしょう。ただしSACDのほうが音の「実体感」があります。そこの差は大きいです。
 これまでのジェネシスSACDは、dts,ドルビーデジタルは聴くことがなかったけど、本作ではちがいます。
 アルバムを演奏中、画面にはジェネシスがライヴで使用したスライドショウが映ります。3つの写真。これが曲目にあわせて変わっていくしかけ。
 基本オリジナルのままですが、DVD用にさらにアレンジし、飽きないようにしています(『ブロードウェイ』の当時のライヴ写真&動画とか使用)。
 この映像とあわせて本編を聴くと、視覚的な『ブロードウェイ』が聴ける(観れる)わけです。映画のようで、これはハマリますね。

 DVDにはその他に特典映像として、現在のメンバーのインタビュー(本作を最後にバンドを離れたピーター・ガブリエルももちろん登場)。1974年のパリのテレビ放送でのライブフィルムを収録。このライヴもピーターがひとり、異質で目立っているんだけど…、それも面白い。というように、てんこ盛りの本作。楽しんでみてください。
 アルバムの最終曲は「it」。すべてのカオスをまとめ上げるように、壮大でカッコよく決めて終ります。

Amazon(国内盤・紙ジャケ仕様)

2009.3.8