モーツァルトの複数のピアノのための協奏曲集
モーツァルトのピアノ協奏曲第7番、第10番は、それぞれ「3台のピアノのための協奏曲(Lodron Concert)」「2台のピアノのための協奏曲」と呼ばれる協奏曲です。このディスクはそれらを収めたSACD。
ピアノはモーツァルト時代の音色を出すフォルテピアノ、オーケストラもオリジナル楽器で透明感のある響きが魅力です。
両協奏曲は、ともにモーツァルトのザルツブルグ時代に書かれており、若さがあっていいですね。特に「2台のピアノのための協奏曲」は有名で、モーツァルトの他のピアノ協奏曲に比べても遜色ない、ホントいい曲です。
モーツァルト自身の編曲によるウィーン版も収録
書き遅れましたが、このSACD、その「2台のピアノのための協奏曲」が2ヴァージョン収録されています。
最初がザルツブルグ時代のオリジナルのもの。二つ目が、モーツァルトがウィーンに出てきて、そこで演奏するためにモーツァルト自身がティンパニ、トランペット、クラリネットを加えて編曲しなおしたもの。通常はザルツブルグ版が演奏されるのですが、このウィーン版もいいのです。
なんといってもクラリネット!
モーツァルトのクラリネットは、聴く者を無常の喜びに誘います。所々、むき出しになるクラリネットのパッセージは、モーツァルト・ファンにはたまらないご馳走となるでしょう。
一方で、ティンパニ、トランペットの追加は、音響を拡大させる役目になっていて、それほど魅惑的でもありません(これはこれでいいのですが)。
英文ライナーノートには、「ティンパニ、トランペットは、第三者による、のちの編曲ではないか?」と疑問を述べていますが、ううむ、そう思うような、思わないような。ま、これ以上、この問題に筆をすすめることはやめて、とりあえず我々はクラリネットを楽しもうではありませんか。
ホールの残響を含んだ音
マルチチャンネルは5.0chの収録、オーストリアのFlorianikircheという会場の残響が、とてもよく響きます。
そのなかに溶け込むオリジナル楽器のオーケストラと、フォルテピアノのサウンドは、音楽としてとても聴きやすいです。やはりクラシックは、マルチチャンネルがやめられないですね。
よくピアノ協奏曲の録音では、ピアノがやたら前面にでてきて、「ホントのバランスかいな?」と思うこと多いのですが、この録音のフォルテピアノは、オーケストラと溶け込んだバランスで、それも気に入りました。
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TOWER RECORDS 
 2008.1.10
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