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サー・コリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団
ベートーヴェン:〈ミサ曲〉 ハ長調 Op.86

ディスク
Beethoven : Mass in C
Sir Colin Davis
Lodon Symphony Orchestra

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収録曲と録音
・〈ミサ曲〉46'15"
2006年2月、ロンドン、バービカンセンター ライヴ
・「囚人の合唱」8'05"
2006年5月、ロンドン、バービカンセンター ライヴ

普通のプラケースにブックレット。
ブックレットには、曲解説と歌詞と演奏者解説。ソリストの写真。

ジャケット裏
B001DPC3RO

コリン・デイヴィスとロンドン交響楽団による〈ミサ曲〉

 ベートーヴェンの宗教曲〈ミサ曲〉ハ長調 Op.86です。
 指揮はサー・コリン・デイヴィス。オケはロンドン交響楽団(LSO)です。
 LSOはハイティンクと、ベートーヴェン交響曲全集のSACDをリリースしていますが、それに通ずるジャケット・デザインです。

「傑作の森」に生まれた宗教曲

 さて、ベートーヴェンの宗教曲というと、晩年の〈ミサ・ソレニムス〉が有名ですが、この〈ミサ曲〉も名作だと思います。

 作曲されたのは、第4交響曲、ヴァイオリン協奏曲の翌年、「運命」「田園」の前年というのですから、ベートーヴェン中期の〈傑作の森〉に位置する作品です。

 〈ミサ曲〉には、当時、革新的なところも多かったようです。そのせいで初演時は受け入れられなかったとか。
 でも、そんな革新性も晩年の傑作〈ミサ・ソレニムス〉の前では、さすがにかすんでしまい、逆に保守的に見えたりと、〈ミサ曲〉はなかなか評価されなかったようです。

歌詞の内容に応じて、楽曲の中でも音楽表現を変化

 でも聴いてみると、結構いい曲でした。
 〈ミサ・ソレニムス〉のような、重みのようなものがなく、ちょっとフォーレの〈レクイエム〉に通ずる透明感があります(ハ長調らしい?)。

 「さすがにベートーヴェン」と思うのは、各曲のなかに、色々な表現が盛り込まれていることです。
 普通〈ミサ曲〉は、「キリエ」「クレド」「グローリア」など、各曲が始まってしまえば、同じ印象で通すと思うのですが、ベートーヴェンの場合、楽曲単位ではなく、曲の中でも、歌詞の内容に応じて、音楽の性格付けを変えたりします。
 オペラとまでは言いませんが、物語のようなものを感じます。

 これはバッハやモーツァルトの宗教曲と趣きがちがうので、「さすがベートーヴェン」と感心してしまいました。
 また随所の、クラリネットの音色が、ベートーヴェンの交響曲を聴く時に感じさせる、あの快感を呼び起こしてくれます。

SACDの音

 ライヴ録音。リスナーから距離をとった、オーケストラ、合唱、ソリストがフロントにあらわれます。

 独唱者の声は、もうちょっと前面に出てもいいと思いますが、「そういうのは昔風のレコーディングかな」とも反省し、このSACDの、ステージを聴いているような感覚でいいか、と思い直しました。
 合唱は雄大に広がります。

 マルチチャンネルは、音像だけならば、残響も感じず、ほとんと2chステレオのような感覚です。

 でも、サラウンドの効果はあるようです。
 トゥッティのあとの残響はさすがに、ホール風に、リスニング・ルーム全体に何秒か残るし、ソリストの張り上げたヴィヴラートの響きもまた、リスニング・ルーム全体に広がる気がしました。

 本作には〈ミサ曲〉のあとに、歌劇〈フィデリオ〉からの「囚人の合唱」が入っています。これは同じくSACDでリリースされている歌劇〈フィデリオ〉からの抜粋です。

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LSOのベートーヴェン・シリーズ SACD
B000M5B3S6 ベートーヴェン:歌劇〈フィデリオ〉/サー・コリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団 B000GUJYRE ベートーヴェン:交響曲全集/ベルナルド・ハイティンク指揮ロンドン交響楽団
SACDラボレビュー
2012.9.20