
Wolfgang Amadeus Mozart
Requiem Reconstraction of First Performance
john Butt
Dunedhin
Amazon

録音2013年
LINN 輸入盤
収録曲
・「レクイエム」K.626 (ジェスマイヤー補筆による1793年1月2日の初演版)
・主の御憐れみを(Misericordias Domini) K.222
・1791年12月10日、モーツァルトの葬儀ための演奏の復元〈レクイエム・エテルナム〉と〈キリエ〉。
パッケージ


プラケースを開けたところ。
ブックレットには英文ライナーで「Mozart's Requiem - Reconstruction of First Performances」、ジョン・バット「Performance Issues」。全文はLINNのホームページでも読める。
ダウンロード
CDクオリティの音源とMP3音源がダウンロードできるカードが同封されている。
|
「レクイエム」の1793年の初演と、1791年モーツァルトの葬儀での演奏
本作はバッハやヘンデルの声楽曲で、それまでにない演奏をしてクラシック・ファンを喜ばせてくれたバット指揮のSACDです。今回はモーツァルト未完の傑作「レクイエム」、それも〈初演復元版〉という珍しい試みです。
本作は「レクエイム」の初演を2つ収録しています。
ひとつは1793年の初演の「レクイエム」。今日に伝わるジェスマイヤー補作による全曲の完成版。
もうひとつは、1791年12月5日モーツァルトの死の早くも5日後、12月10日に聖ミカエル教会でおこなわれた、モーツァルト自身の葬儀のための演奏。こちらは全曲ではなく、モーツァルトが生前完成させていたと言われる「レクイエム」の冒頭〈レクイエム・エテルナム〉と〈キリエ〉の2曲。
あと同じく聖ミカエル教会のライブラリーに残されていたK.222の「主の御憐れみを」も収録。
空間のなかに質素な「レクイエム」があらわれるサラウンド
初演復元版とあってオーケストラの編成がたいへん小さいです。室内楽と言ったほうがいい「スケルトン状態」の音。
さらに合唱も、ブックレットによれば16人で、4人の独唱者も兼任で合唱に加わっています。
逆に言えば合唱のひとりが独唱を受けおっている。英文ブックレットによれば、当時はそんな習慣だったようです。
こんな編成ですので、マルチチャンネルで聴くと、きれいな空間のなかに質素な「レクイエム」が現れることになります。
「レクイエム」のために空間があるのではなくて、空間のなかに「レクイエム」がある感じ。
合唱は「スケルトン状態」のオケにさえ、時には負けそう。
独唱歌手も、他の録音のようなスター性を感じさせない「無名」な歌声に聴こえるのです。
この響き方がとてもいいので、本当に初演の1793年の空間にいるような感じがします。しかしこれはマルチチャンネルで聴いて、という条件がつきます。
2chでは誰にも文句なし、LINNの高音質
SACD2chで再生してみると、合唱もオーケストラも距離感がせばまり、力強さがでてきて質素さは影をひそめます。
独唱も力強く現れて存在感があります。他の録音のように「どんな歌手なんだ?」と注意を惹きます。
音の広がりも素晴らしく、2chでは、言わば誰にも文句なしのLINNの高音質で「レクイエム」を聴くことができるのです。
でもサラウンドでの「質素なレクイエム」はここにはありません。高音質の見本のような2chの「レクイエム」もいいですが、やはり、あの空間に帰りたいです。
1791年のモーツァルトの葬儀での2曲は、朽ち果てんばかりのサラウンド空間
ということで、再びサラウンドに話をもどします。
トラック18と19の、聖ミカエル教会でおこなわれたモーツァルト自身の葬儀で演奏された「レクイエム」からの最初の2曲〈レクイエム・エテルナム〉と〈キリエ〉。
ここでの合唱は8人ではないでしょうか(ブックレットの写真にも写っています)。オケも1793年版よりさらに薄い音になっているのですが、それにさえ負けています。
ちなみに2chではこれらのトラックも、音の壁ができる見事なオーディオ音。
それがサラウンドでは、2chのように音楽が主役ではなく、朽ち果てんばかりに空間にあらわれるだけです。2chとサラウンドでは、同じ録音でもずいぶん違って聞えるものだと、あらためて思いました。
なおトラック17の「主の御憐れみを」 K.222は、モーツァルトが最後の年に聖ミカエル教会で演奏したらしいです。
その編成から「レクイエム」の1791年初演版の参考にしたのではないでしょうか(すみません、英文ライナーが読みこめないので推測です)。これは〈キリエ〉のようなフーガあり、ベートーヴェンの「歓喜の歌」のようなフレーズありという曲。

Amazon
ジョン・バット指揮ダンディン・コンソート、レビュー
 2014.4.4
|