
国内盤、ソニーミュージック
録音2004年
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普通のプラケースにブックレット。
本作は中村とうよう氏のプロデュースによるもの。
ブックレットには中村氏によるライナー「パーカッション音楽の花が咲く」が載っています。
曲目解説も含まれ、使用パーカッションの楽器写真も載っています。
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心が全開、ラテン・ジャズの癒しサラウンド
今回は筆者の“隠し球”的SACDをご紹介します。
筆者はこのSACDのマルチチャンネルを、〈癒しマルチチャンネル〉として、時々取り出しては堪能しているのです。
本作はラテン・パーカッション奏者ウィリー・ナガサキを中心に、ブラス・セクションを加えて演奏した「ラテン・ジャズ」のSACDです。ラテン音楽に詳しくはないのでよく分からないが、全体的にビッグバンドのノリで、マンボ、ルンバ、サルサなどのリズムが押し寄せます。
おおらかで、跳ね上がるようなリズム。色彩的なパーカッションの重なり。クラシックやジャズの一種「教条的な時間」はここにはありません。ロックの「ヒステリックな叫び」もここにはありません。
この音楽を聴いていると、心を全開にして音楽を受け入れている自分になれるのです。だから〈癒し〉なんですねえ。
さらにマルチチャンネル。このサラウンドは前方180度に大きな演奏の玉(空間)ができて鳴っている感じです。その中に自分も含まれてしまうわけで、音楽に加えて、ここに座っていることの居心地の良さといったら! ですのでマルチで〈ダブル癒し〉となるわけです。
厚い音がやわらかく重なってキモチいい
ソニーの乃木坂スタジオでDSDレコーディングされた音も、すごいです。
ラテンパーカッションの〈マラーカス〉〈チェケレー〉〈コンガ〉〈ボンゴ〉〈グィロ〉などが大活躍します。
これらは普通のポピュラー・ミュージックでも使用されますが、あくまでアクセサリーとして使われる程度でしょう。音も隅っこのほう。
しかし本作ではラテンパーカッションは主役。
左側、右側、そして中央に、バッチリ前面に音を配置してきます。音の存在感はピアノと同じくらいの比重。それも「太い密度の濃い音」で鳴ります。こんな〈コンガ〉や〈ボンゴ〉の音、めったに聴けないのではないでしょうか。もちろんウィリー・ナガサキの〈ティンバーレス〉の強打も聞きのがせません。
3曲目「ポンセ」や8曲目「マンボ・イン」では、そんな骨太のパーカッションに、トランペットやサックスのブラス・セクションがかぶってきます。厚い音がやわらかく何層にも重なっている。
この瞬間が、聴いていてキモチいいんですよねえ。これはSACD2chでも堪能できると思います。
リラックスしたイントロとエンディングではさまれた、いい曲たち
最後に収録曲を少しご紹介します。〈癒し〉とはいいながら曲もとてもいいので。
「ティト・ティンベーロ」では先のパーカション類が順番にイントロで加わってくるので、楽器が分かりやすいです。
このSACDのクライマックスは8曲目の「マンボ・イン」でしょう。キューバの空のような、最高に明るいマンボ・ジャズ。ノリは最高。
で、クライマックスの「だめ押し」とも言えるのが9曲目「ディアブロ」。ウィリー・ナガサキのオリジナルですが、これが完璧な「ラテン・ロック」。ハモンド・オルガン(平田フミト)、エレキ・ギター(小沼ようすけ)を加えた演奏は、あのラテン・ロックバンド、サンタナのデビュー盤の演奏のよう、とご想像してください。これも白熱です。
このSACDのオープニングとエンディングは、波の音とちょっとした楽器によるリラックスな時間です。こちらはマルチチャンネルも「フル360度」の広々とした空間になります。このアイデアも効果的で好きです。
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 2009.12.1
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