薬師丸ひろ子 Cinema Songs (45回転アナログレコード2枚組) |
薬師丸ひろ子が2016年にリリースした映画音楽集『Cinema Songs』が、ステレオサウンド製作によりアナログ・レコード化されました。
それも45回転LPという、オーディオ・マニアにはたまらないレコードです。
最近の高音質アナログ・レコードは着実に45回転LPがトレンドになりつつあります。SACDラボも周りのオーディオ仲間から「45回転LPは音がいいよ」といつも言われてきました。
45回転ですので、自ずと片面の収録曲が少なくなります。本作では各面に3曲づつカッティング。この余裕のカッティングも45回転のスピードと合わせて魅力です。
まずレコード盤を手に持ち、溝を眺めているだけでキモチいいのですねえ。
片面に3曲だけ、という贅沢さはそれだけで、レコード盤が宝物だった昔のように“愛おしいレコード”となります。「大切に聴くぞ」という思いがわいてくるのです。
加えて180gという重さもたまりません。
180g重量盤は今日珍しくありませんが、2枚組ともなると、最初にジャケットを持っただけでズシリと2枚分の重さを感じます。
気のせいか45回転のカッティングの重量盤は、さらにズシリと感じてしまうわけで、まずは“溝”と“重さ”にオーディオ的快感を味あわせてもらいました。
ということで聴くことにします。プレーヤーはガラード301、SMEのトーンアームにカートリッジはオルトフォンSPU♯1Eです。アンプはアキュフェーズE-370でフォノイコライザー内臓のもの。
回転数をこれまでほとんど使わなかった45rpmに合わせてスタート。
1曲目「ムーン・リバー」が始まったところで、立ち上がったアナログサウンドにウットリきました。
クッキリと細部まで彫り込まれたような音があらわれました。SACDなどの高音質盤を聴き慣れていても、やっぱりアナログ独特の高音質というのがあるのをあらためて感じます。
温かみのある音質は当然感じるとしても、そのほかに、音の側面から裏面まで実感させるような粒立ち。これがキモチいいですねえ。本作では、この粒立ち、立ち上がりがキモチ良くて、アナログの持つ温かみさえまず2番手になったほどです。
ここまでの快感は、ちょっと普通のLPのリスニングにはなかったことを考えると、これが“45回転の音”というものでしょうか。
それはともかく、ジャケット見開き掲載のライナーに、ステレオサウンド製作によるアナログ盤の特徴として、「音量を上げるほど細部の音が浮かび上がってくる」とありましたので、まさに製作サイドの仕事が音にあらわれているように思います。
とはいえ、いくらいい音でも、音楽が良くなければ、聴いていて楽しくありません。
その点、本作は薬師丸ひろ子の伸びやかな歌声がすごくいいのです。薬師丸ひろ子の歌声で聴くと、映画音楽のスタンダードも凄く味わい深いです。
彼女のまっすぐに伸びる声はとても清涼で、味わいがあります。最近の歌手のように変な節回しをされたり、R&B風に歌われるよりはずっと心地よいのです。
先ほど1曲目の「ムーン・リバー」で音質にハッとしたことを書きましたが、同時に薬師丸ひろ子の歌声にもハッとしたのでした。心和みますねえ。
曲はしっとり歌うものもあれば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で挿入歌になったオールディーズ「Mr.Sandman」のような軽快なものもあります。いずれにしても星空のようなサウンドのオーケストラをバックに至極の時間が流れます。
いい音 × 薬師丸ひろ子の歌声。
これでキモチ良さは確実なものとなったのでありました。45回転の片面に収められた3曲が、ストレスなく聴けて、次の面へと誘ってくれます。
最終面は「愛のバラード」、『犬神家の一族』のテーマ曲で「戦士の休息」、そして「セーラー服と機関銃」。
やっぱりアナログレコードはいい。そして45回転LPはいい。そして薬師丸ひろ子はいい。
そう思ったレコードでした。これまでのレコードコレクションの中で、特別“愛おしいレコード”になったことは言うまでもありません。
令和の時代のアナログ・レコードの楽しみ方は、こういうじっくりと暖かいものでありたい、そう思いました。本作は通常のレコード・ショップでは取り扱っておらず、ステレオサウンド・ストアにて購入できます。よかったら聴いてみてください。
2019年4月18日