Stereo Sound Reference Record NOBU'S POPULAR SELECTION |
NOBU'S POPULAR SELECTION (LP)
制作・発売:ソニー・ミュージックダイレクト
企画・販売:株式会社ステレオサウンド
発売日:2021年8月20日
33回転アナログレコード2枚組
2021年8月19日 文・牧野良幸
ステレオサウンド社(Stereo Sound)から、オーディオ評論家の傅信幸氏が選曲・構成したLPレコードがリリースされた。タイトルは『NOBU'S POPULAR SELECTION』。33回転アナログレコード2枚組である。
このレコードは、2010年にステレオサウンドから発売になったSACDハイブリッドをアナログ・レコード化したものである。
SACDのマスタリングはソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二氏によるもので、オーディオ・レファレンスとして愛好されてきた。アナログレコードもその音源を使用している。カッティングは名匠バーニー・グランドマン氏がおこなっている。
それを日本のソニーの工場でプレスして製作した。
SACDでは1枚だったが、LPレコードでは2枚組になる。そのため片面には3曲か4曲が収録。内周は避けで、ゆったりとカッティングされている。
傅信幸氏が選んだ収録曲はいい楽曲ばかりである。その点でもおすすめ。
大きくくくるとA面は80年代初頭のAOR、B面はバラエティなロック。C面は女性ヴォーカル、D面は器楽をメインにしたもの、と言えそうである。
レコードに針を落とすと、静寂の中から極上の音が昇り立つ。彫りの深い立体的な音だ。僕の体感では、33回転なのに45回転LPのような伸びやかな音に思った。
A面はソリッドながら充実した音のAORサウンド。減衰音も綺麗だ。中でもボズ・スキャッグス「ジョジョ」は、僕も好きで収録されている『ミドル・マン』をアナログで持っているが、本作の方がクリアでキレが良い。最高にかっこいい「ジョジョ」だ。
B面1曲目のEW&F「レッツ・グルーヴ」もエネルギーにあふれている。そのあとロジャー・ウォーターズとウィリー・ネルソンでしっとりくる流れ。
C面は女性ヴォーカルの浮かび上がる空間が聴きどころか。アン・バートンやカーラ・ボノフも素晴らしいが、ビートルズのカバー「アクロス・ザ・ユニバース」はウクレレを伴奏にシンディ・ローパーが歌っている。ウクレレとローパーのヴォーカルがクリアに鮮烈に浮かび上がるさまは、レコードの溝から生まれた音とは信じられないほど生々しい(それもいちばん内周の曲なのに)。
D面では倍音のふくよかなピアノやチェロの音が再生される。
これはレファレンス・レコードとしても貴重だと思う。僕などこのレコードを聴いて、「自分のシステムも結構いい音が出るものだ」と自信をつけてしまった。ありがたい。
僕のシステムはガラード301、オルトフォンのSPU#1E、アキュフェーズのE-370(フォノイコがオプションで内蔵)、B&W804だが、自慢のシステムをお持ちの方は、もっといい音を引き出せると思う。
曲よし、音よし、各面の収録時間よし。オーディオファイルが何回も針を落とすレコードというは、こういうレコードをさすのだろう。
Side A
Side B
Side C
Side D
NOBU'S POPULAR SELECTION (LP)
制作・発売:ソニー・ミュージックダイレクト
企画・販売:株式会社ステレオサウンド
発売日:2021年8月20日
33回転アナログレコード2枚組