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Abbey Road Super Dellux Edditon(Blu-ray Audio+3CD) フランク・シナトラ
マイウェイ(50周年記念エディション)

フランク・シナトラ
『マイウェイ』[50周年エディション]
SACD/CDハイブリッド

Stereo Sound(ステレオサウンド社)

発売日:2021年3月12日

ステレオサウンド・ストア

2021年3月20日 文・牧野良幸

シナトラの『マイウェイ』がStereo Soundにより初のSACD化

Stereo Sound(ステレオサウンド)がフランク・シナトラの1969年作品『マイウェイ』を初めてSACD化した。「50周年エディション」としてオリジナルの10曲に加えボーナス・トラック4曲を収録。盤面印刷は緑色仕様。SACDハイブリッド。

本編となる10曲は米国のオリジナル・アナログ・マスターテープから192kHz/24bitにトランスファーされたデジタルマスター音源を使ってのSACD化。近年、欧米のメジャー・レーベルでは、コンディションの維持がむづかしくなってきたアナログマスターからデジタルアーカイヴが盛んに行われているのだそうだ。

マスタリング・エンジニアは、これまでも数々のSACDでおなじみの鈴木浩二氏(ソニー・ミュージックスタジオ)。鈴木氏はフラット・トランスファーを心がけながら丁寧にDSDリマスタリングしたという。

「うちのオーディオ、こんないい音を出すのか!?」

1曲目の「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」から、いきなり粋のいい音がスピーカーから出た。鳴りっぷりがいい、ふくよかなサウンドだ。思わず「うちのオーディオ、こんないい音を出すのか!?」と思ったほどである。

シナトラのヴォーカルが豊かに浮かび上がる。ビッグ・バンドの音もコクがある。ここまで“オーディオ好き”する音も珍しい。オリジナルのアナログ録音の良さ、それとSACDの製作のうまさだと思う。

それは今回Stereo SoundがSACDハイブリッド化した、他のフランク・シナトラのSACD『シナトラズ・シナトラ』、と『スウィング!シナトラ=ベイシー=クインシー』を聴いても同様だった。ということは、シナトラの厚みのあるヴォーカルにはハイ・ファイに響く、(チェロやビッグ・バンドの音のような)いい音になる要素が含まれるのかもしれない。

当時流行の音楽を取り入れた意欲作

ここで断っておくと、僕はアルバムの『マイウェイ』を聴くのは、人生において初めてである。シングル盤(ドーナッツ盤)の「マイ・ウェイ」は大学生の時に買い何度も聴いたものだ。そしてカラオケでシナトラ気取りの「マイ・ウェイ」を聞かされることも何度かあった。しかしアルバム『マイウェイ』を聴くのは、このSACDが初めてである。

「マイ・ウェイ」は数えきれないほどのカバーが存在すると思うが、シナトラの歌い方がやはり一番味わい深い。哀愁が漂うし、適度に崩しながらも普遍性に満ちた歌い方が好きだ。

そんな不滅の名曲「マイ・ウェイ」だけに、“アルバムは他にどんな曲を入れているのだろう?”とずっと思っていた。“バランスが取れるのかな。他の曲がつまらなく思えないか”と余計な心配をした。

他に収録されているのは、ビートルズの「イエスタデイ」、レイ・チャールズの「ハレルヤ、アイ・ラヴ・ハー・ソー」、スティーヴィー・ワンダーで有名な「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」、サイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」。

つまり1960年代に音楽界を席巻したロック、ソウル、ポップスの曲をカバーしている。当時シナトラが若いリスナーにアピールしようと選曲したのだろう。

シングル「マイ・ウェイ」から、アルバム『マイウェイ』の人生へ

しかし、これらはシナトラ用のアレンジが施されており、シナトラも自分のものにして歌っている。特に「ミセス・ロビンソン」などはスウィング調のアレンジで、こういう方法もアリだと思った。

レイ・チャールズ、スティーヴィー・ワンダーの曲も“シナトラ流”に昇華されていてカヴァーくさくない。そしていささかも若者にこびていない。やはりフランク・シナトラはわが道を行くヴォーカリストだと思う(「イエスタデイ」だけは曲が曲だけにカバーぽさが醸し出るのは仕方がない)。

これらにミュージカルの曲などを加えて、全体を見事にまとめたのが『マイウェイ』だ。シングルの「マイ・ウェイ」だけが浮き立つかと思ったのは杞憂(きゆう)だった。アルバムとして楽しめる。

10代の頃、針が擦り切れるほど聴いた「マイ・ウェイ」。これまではシングルの「マイ・ウェイ」のみの人生だった。これからはSACDを何度も聴いて、アルバムの『マイウェイ』と人生を歩もうと思う。家のオーディオが気持ち良くなってくれるのだから、それもまた楽し、である。

収録曲
1. ウォッチ・ホワット・ハプンズ 〜映画「シェルブールの雨傘」より
2. ディドゥント・ウィー
3. ハレルヤ、アイ・ラヴ・ハー・ソー
4. イエスタデイ
5. オール・マイ・トゥモローズ 〜映画「波も涙も暖かい」より
6. マイ・ウェイ
7. ア・デイ・イン・ザ・ライフ・オブ・ア・フール 〜映画「黒いオルフェ」より
8. フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ
9. イフ・ユー・ゴー・アウェイ
10. ミセス・ロビンソン 〜映画「卒業」より

ボーナス・トラック
11. マイ・ウェイ duet with ウィリー・ネルソン
12. マイ・ウェイ duet with ルチアーノ・パヴァロッティ
13. マイ・ウェイ(ライヴ・アット・ジ・アーマンソン・シアター、LA、CA、1971年6月13日)
14. マイ・ウェイ(ライヴ・アット・ザ・リユニオン・アリーナ、ダラス、TX、1987年10月24日)

フランク・シナトラ
『マイウェイ』[50周年エディション]
SACD/CDハイブリッド

Stereo Sound(ステレオサウンド社)

発売日:2021年3月12日

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