ギル・エヴァンスとの共演第1作。3部作ではこれが一番好き
本作はマイルス・デイビスとギル・エヴァンスの共作第1作で、1957年の録音。SACD専用ディスクです。
マイルスとギル・エヴァンスはこのあと『ボーギー&ベス』『スケッチズ・オブ・スペイン』と共作しますが、僕は、ギル・エヴァンスとの共作では、この『マイルス・アヘッド』が一番好きです。
『ボーギー&ベス』や『スケッチズ・オブ・スペイン』では、原作にひっぱられて、またテーマに押されて、音楽が重ためなのに対して、『マイルス・アヘッド』の音楽は、スカーとしたアレンジ。聴く方もリラックスして聴けます。
ジャケットはヨットと海ですが、このアルバムの印象は、どちらかというと、ニューヨークのマンハッタンです。「ウエスト・サイド・ストーリー」のような、「都会的でクールなスイング・ジャズ」と思います。
ギルのアレンジが、カッコよくビッグ・バンドを鳴らす
最初の「スプリングヴィル」から、とにかく、ギル・エバンスのアレンジがカッコいい。ビッグ・バンドがユニゾンやハーモニーで、ノリノリのアンサンブルを聴かせます。マイルスもフリューゲル・ホルンを甘く奏でる。
全10曲は組曲風。それぞれ独立している曲ですが、切れ目なく次の曲に移っていきます(その移り変る瞬間もカッコいいんだなあ)。
いかしたフレーズが印象的な「ザ・デューク」から、クルト・ワイル作「マイ・シップ」のバラードへ、すかさず「マイルス・アヘッド」の美しいミディアム曲へ、というように。
LPでのB面にあたる「ブルース・フォー・パブロ」は「アランフェス協奏曲」をちょっと思わせる曲。「ニュー・ルンバ」はスウィング感、ドライヴ感が堪能できる曲。
ギルのアレンジのなかで聴かせるマイルス
本作のマイルスのプレイは、ギル・エヴァンスのアレンジのなかにキッチリ組み込まれた感じです。
フリューゲル・ホルンの音色もあいまって、マイルスの表現は中庸レンジで収まっているのですが、それでもメロディーの歌い上げ方はマイルスならでは。
ラストの「アイ・ドント・ウォナ・ビー・キスト」は、キュートにその音色をころがしていきます。この曲のリム・ショットのノリは、翌年発表の『マイルストーンズ』のリズム感を思わせます。
1957年録音なのに、すごく抜けた空間
1957年録音なのに、このSACDの音は「スカッと抜けた空間」に驚きます。
ベースはそれほどでもないけれど、ビッグバンドのダイナミックレンジはなかなかあります。
管楽器のブレンドされた音が一番ごちそうでした。この音で、ピッタリのアンサンブルでスイングされると、とても気持ちいいのです。
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マイルスとギル・エヴァンスのSACD
2010.8.25
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