フォープレイ ベスト・オブ・フォープレイ |
2021年6月20日 文・牧野良幸
香港の高音質レーベルevosoundがフォープレイの『ベスト・オブ・フォープレイ』をSACDハイブリッドで発売した。
SACDはオリジナル・アナログ・マスターテープから最新リマスタリングされている。
またボーナストラックとして「ザ・クローサー・アイ・ゲット・トゥ・ユー」が収録されている。
フォープレイ(Fourplay)は、1991年に結成されたコンテンポラリー・ジャズ・シーンを代表するグループだ。
メンバーはボブ・ジェームス(key)、リー・リトナー(g)、ネーザン・イースト(b)、ハーヴィー・メイソン(ds)という、そうそうたるメンバーが話題となった。4人はグラミー賞にノミネートされる作品を次々に生み出していく。
『ベスト・オブ・フォープレイ』は1997年に発売されたフォープレイ初のベスト盤。発売時にアメリカでゴールド・ディスクを受賞した。リー・リトナーはその後にグループを離れるので、リー・リトナー在籍時のベストというところも魅力だ。
フォープレイの音楽は大まかに言ってスムースジャズ(スムーズジャズ)であろう。「Smooth」という単語のとおりスムーズに流れる音楽だ。
個人的な感想だが、スムースジャズはマイルス・デイヴィスやビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、チック・コリアを聴いてきた自分には、少し物足りない。引っ掛かりが乏しいと思ってしまう。
しかしこのSACDを聴いてすぐに考えをあらためた。1曲目の「マックス・オー・マン」で。
SACDの高音質で再生されるスムース・ジャズは心にがっちり引っかかった。4人のタイトな演奏、そして音自体が身にしみいる。何度も聴いてみたくなる演奏だとようやく知った。
もちろんSACDならどんなスムースジャズでも気に入るわけではない。フォープレイの演奏がやはり素晴らしいのだ。それを先入観なしで感じさせてくれたのが高音質だったにすぎない。
言うまでもなく、ボブ・ジェームスはフュージョン時代からの代表的キーボード奏者にして、スムースジャズの立役者にもなった人。リー・リトナーもまたジャズ・ギタリストを代表するひとり。嬉しいのはハービー・ハンコック『ヘッド・ハンターズ』のドラマー、ハーヴィー・メイソン。『ヘッド・ハンターズ』とはまた違うドラムを聴かせてくれる。
さらにこのアルバムに参加しているヴォーカリストにも注目。チャカ・カーンやボーナストラックでのパティ・オースティンなど僕の好きな歌手が彩りを添える。
他にもスティーヴィー・ワンダーの「ハイアー・グラウンド」やマーヴィン・ゲイの「アフター・ザ・ダンス」など、ヴォーカリストをフィーチャーしてソウルの名曲をカヴァー。ジャズ、フュージョンにおさまらない流れだ。
そんなヴァラエティに富んだアルバムの中で、僕のベスト・トラックをあげるとすれば、彼らの人気曲「バリ・ラン」と「プレイ・レディ・プレイ」だ。どちらもノリノリのサウンド。もうスムースジャズが嫌いとは言わせない。
収録曲