ザ・グレイト・ジャズ・トリオ:アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
文・杉田ヨシオ 2022年12月12日
Stereo Soundが復刻 名門イースト・ウィンドのLPレコード
ステレオサウンド(Stereo Sound)が1970年代の日本の名門ジャズレーベル、イースト・ウィンド(East Wind、プロデューサーは伊藤潔氏と伊藤八十八氏)の人気レコードを復刻した。
今回復刻したのはザ・グレイト・ジャズ・トリオ『アット・ザ・ヴィレッジ・バンガード』と渡辺貞夫 ウイズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ『アイム・オールド・ファッション』である。
ラッカー盤を製作したのはPICCOLO AUDIO WORKS(東京・湯島)を主宰するエンジニアの松下真也氏。機材はレストアされたスカーリー製カッティングレースとウェストレックス製カッターヘッドの組み合せ。これはあのルディ・ヴァン・ゲルダーと同じだという。
さらに監修・サウンドスーパーバイザーにジャズ喫茶「ベイシー」店主の菅原正二氏。
これだけ読んでも「いいねえ」と思う。やはり自分はオーディオ・マニアだと自覚する。

レーベルにはEWのロゴ。片面2曲づつ。
豪快なソロあり、溶け合うプレイありのピアノ・トリオ
ここではザ・グレイト・ジャズ・トリオ『アット・ザ・ヴィレッジ・バンガード』を聴いてみた。
収録されているのは1977年のニューヨーク、ヴィレッジ・バンガードでのライヴだ。
レコードに針を落とす。1曲目「ムース・ザ・ムーチ」の音を聴くと、早くも「デリシャス!」と思う。アナログ・ファンの好きな音質だ。粒立ちのいい音が柔らかく鳴る。こういう音は「デリシャス」なのです。自分のシステムもまんざらではないな、と自惚れたくなる。そんな音である。
中央にロン・カーターのベース。左にハンク・ジョーンズのピアノ。右にトニー・ウィリアムスのドラム。
トニー・ウィリアムスと言えば、若くしてマイルスのバンドに加わっただけあって、すごいドラムを叩く人というイメージであるが、マイルス・バンド加入から年齢を重ねた、この1977年録音でも、やっぱりすごいドラミングを披露している。
ライナーはオリジナル・ライナーと別に菅原正二氏のライナーがある。プロデューサー伊藤八十八氏が菅原氏にテスト盤を持参した時のことを回顧したライナー。それを読むと、このトニーの演奏は伊藤八十八氏にもご自慢の録音だったようだ。
なにせドラムセットの細かい動きが右スピーカー周辺で繰り広げられる。ドラミングだけで、一つの音楽が成立しているかのようで、実に面白い。
そのトニー・ウィリアムスのドラム・ソロが終わったところで拍手が起きると、これがライヴだと改めて自覚する。それほどクリアなサウンド。スタジオ録音のつもりで聴いていた自分がいた。
もちろんロン・カーターにも長いベース・ソロがあり(特にB面で印象的)、聴かせてくれる。ハンク・ジョーンズはオーソドックスなプレイながらも、いぶし銀のような演奏で、常に左サイドから。ひと粒ひと粒の音が心地よいし、コードも心地よい。いい音を鳴らし続けてくれる。
この3人の作り出す音場は3人が絶妙に呼応し、溶け合って美味です。アナログ・ファンには自慢のシステムを快適に鳴らす1枚でしょう。
Side A
- ムース・ザ・ムーチ
- ナイーマ
Side B
- フェイヴァーズ
- 12+12