マッコイもいいが、ヘンダーソンもいいぞ、の演奏
1991年の録音。マッコイ・タイナーのほかのメンバーは、サックスにジョー・ヘンダーソン、ベースにロン・カーター、ドラムにアル・フォスターという豪華な顔ぶれです。
ここでのマッコイのピアノは、パワーもあるが、それよりゴージャズで上品にも思いました。
しかし、なんといってもいいのはジョー・ヘンダーソンです。彼ってこんなに凄かったか。テナー・サックスの「吹き具合」「かすれ具合」。惹きつけます。
もちろんマッコイのピアノもいいし、リズム隊も文句のあるメンツじゃありません。ひととおりの演奏では終わりませんね。
さすがチェスキー。オーディオ的にキモチいい
録音がいいと評判のチェスキー・レコードですから、オーディオ的にも興味深いところです。
1991年の録音ですが、このレーベルのこだわり「オーバー・ダビングなし」「マルチトラックなし」「コンプレッサーなし」「最小のマイクセッティング」などなど、極限まで余分なものを排除した録音です。英文でよく分からないのですが、真空管システムのマイクも使っているようです。
こんなコンセプトですから、とても音がいいです。まずSACDステレオで聴いてみました。
特に中域がシルキーで繊細な印象。4人のミュージシャンの音が、ひとつの空間で鳴っていると、頭ではなく身体で感じてしまいます。
1991年の録音ゆえ、当然あとからマルチチャンネル化したものでしょう。しかし、このマルチチャンネルがまた良いのです。
SACDステレオを、さらに前に飛び出させた感じで、ぐっとバンドが前にでて立体的に目の前で鳴ってくれます。
さらに空間が、演奏会場のような反響になります。
といっても反響音ビンビンのそれではなく、「実際に生で聴くと、こんな響きに包まれるだろうな」と思われるドンピシャの、節度ある響きでした。特にジョー・ヘンダーソンの聴かせるソロで顕著。うまくまとめたマルチチャンネルだと感心しました。
ステレオかマルチかは、その時のお好みで聴き分けることにしましょう。「録音がいい+SACDの音がいい」のディスクと言えます。
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 2008.8.19
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