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SACDhybrid ビリー・ホリデイ レディ・イン・サテン+4


Billie Holiday
Lady in Satin
Stereo/Multi-ch
録音1958年2月、N.Y.
国内盤、ソニーミュージック
SACD専用ディスク

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ソニー初期のSACD。正方形のデジパック仕様。

ボーナストラックが4曲。「恋は愚かと言うけれど」のテイク違い、「恋路の果て」のステレオバージョン(アルバム本編にはこれだけモノバージョンだった)。

4つ折のペラ解説書には、大和 明氏の解説(CD発表時のもの)。英語の歌詞。

ビリー・ホリデイのバラード集。このアルバムと時を過ごす

 これは何度となく聴いているSACD。ときおり夜に取り出しては、このアルバムと時を過ごしています。
 本作は1958年、ビリー・ホリデイが亡くなる1年半前の録音です。ストリグス、コーラスを加えたバラード集。
 晩年のビリー・ホリデイの歌声に、往年の艶はありません。麻薬、アルコール、人種的偏見など、すさんだ生活のなか、全盛期の魅力的な声は失われてしまっています。1曲目の「恋は愚かというけれど」のヴォーカルは痛々しい。
 そう書くと、このアルバムは自滅的な印象ですが、そうとばかりも言えません。声も中盤の「イッツ・イージー・トゥ・リメンバー」や「恋路の果て」では、つややかです。
 なにより、このアルバムが感動的なのは、声の衰えはあっても(また、それだけに)彼女の持てる歌唱法や表現力を駆使して、すばらしい歌を聴かせてくれる、ということ。
 実際、レイ・エリスの好編曲の採用、自身の本領を発揮できる曲の選択と、彼女にとって意欲作だったようです。
 ボーナストラック「恋の果て(ジ・オーディオ・ストーリー)」で、ビリーが上手く歌えず、途中で止めてしまうシーンでは、彼女の意気込みさえ感じてしまいました。

ヴォーカル、ソロ楽器に音の良さを感じました

 SACDで聴くと、ヴォーカルの「濃さ」が実感されます。肉声や舌なめずりのような音がリアル。
 ソロを受け持つ、J.J.ジョンソンのトロンボーンや、メル・デイヴィスのトランペットも瑞々しい豊かな音。今年亡くなったハンク・ジョーンズ、マル・ウォルドロンもピアノで参加しています。
 それに比べると、ストリングスとコーラスはさすがに音域が狭いのですが、それが逆に当時の音を伝えてくれている気がします。これらが現代の高音質だったら、アルバム全体の世界が壊れてしまうでしょう。
 たとえSACDでなくても聴きたいアルバムですが、それだけにSACDで聴けるのは幸せ。時折、彼女の声が聴きたくなります。

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2010.9.1