クララ #アコースティックナウ |
2021年6月4日 文・杉田ユキオ
本作は香港のevosoundレーベルのアーティスト、クララ(Chlara)が2020年末に発表したアルバムである。『#アコースティックナウ』というタイトルからもわかるとおり、アコースティック・ギターをバックに歌う高音質を堪能できるアルバム。
このアルバムはSACDハイブリッド、LPレコード、MQA-CDの3ヴァージョンで発売されているが、ここではSACDハイブリッドを取り上げる。
収録されるのは、クララ自身が影響を受けたヒット曲のカヴァー。オリジナルのアーティストを見ると、さすがにクララと筆者とは世代の差を感じる。
知っているところではティアーズ・フォー・フィアーズ、エア・サプライあたりで、ボーイズIIメン、ジャスティン・ビーバー、ジョン・メイヤーがかろうじて。その他のアーティストとなると残念ながら知らない名前が並ぶ。
しかしオリジナルのアーティストは気にならない。なぜならどの曲も世代と関係なくいい音楽だと思うからだ。
実は、筆者はSACDの発売前にアルバムをサブスクで聴いたのだった。1曲目から順番に聴いていくと、すぐに
「今度のアルバムは曲がいい。作曲をしたクララはすごい才能だ」
などと驚嘆したものである。
もちろん作曲をクララがしたというのは筆者の勘違いである。サブスクの画面をしっかりと見ないで、勝手に筆者は思い込んでいたのだった。
後からこのアルバムがカヴァー集と知ってびっくりしたが、もちろんそれで失望はしない。むしろカヴァーと感じさせないほど、自分のものにしているクララに関心した。オリジナルを知らない曲は、このクララのヴァージョンが愛着のあるトラックとなる。
音質は、中央にクララのヴォーカルがクッキリと大きく出る。両サイドにアコースティック・ギター。解像度の高い再生音だと思う。
クララのヴォーカルはしっかりとメロディラインを歌っていく。
ギターも注目である。ギターだけなのにロック的なビートを感じる曲があるのは、ギター奏者のうまさとアレンジの良さだろうか。左右2本のギター(時に中央に3本目?)の絡み合いがいい。
ティアーズ・フォー・フィアーズの「Everybody Wants To Rule The World」はギターで原曲のリズム感をうまく出している。エド・シーランのカヴァー「Perfect」、ボイス・アヴェニューのカヴァー「Come On Get Higher」なども気に入ったトラックだ。曲によってはヴァイオリンやストリングス、アコースティック・ベース、ピアノなどが加わる。
曲がいいだけに、ときおり取り出して聴きたくなるSACDだ。
クララ
イギリス出身で9歳の時にフィリピンに移り住む。11歳の時に学校に行く傍、音楽教室にも通い、音楽的センスを幼少期より磨く。大学入学前にすでに作曲を始めていたが、その才能は花開いており、香港エヴォリューション・ミュージックと契約。世界中のリスナーにその美声を届けている。
収録曲(オリジナル・アーティスト)