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SACD バルバラ
ボビノ座のバルバラ・リサイタル'67

バルバラ/ボビノ座のバルバラ・リサイタル'67(Single Layer SACD+CD)
ステレオサウンド社 / SACDシングルレイヤー + CD / 2ch/ 2019年12月21日発売

ステレオサウンドストア

文・牧野良幸

傑作ヴォーカル・アルバムがSACDで聴けるようになった

ステレオサウンド社(Stereo Sound)から、フランスの名シャンソン歌手バルバラの『ボビノ座のバルバラ・リサイタル'67』がSACD化された。SACDシングルレイヤーとCDの2枚組である。どちらも盤面が赤色レーザーの散乱を防ぐ緑色仕様。

本作は1966年のボビノ座でのライヴ録音だ。発売以来、50年以上の長きにわたってオーディオ・ファンに人気のヴォーカル・アルバムだったのだそうだ。本作にライナーを寄せているオーディオ評論家の和田博己氏も愛聴盤だったようである(ライナーによれば、同じくオーディオ評論家の故瀬川冬樹氏も愛聴盤だったらしい)。

今回ステレオサウンドは、フランス国内に保管されていた初版LP用に製作された2トラック・オリジナル・マスターテープを使用した。マスタリングもあえて日本ではなく、「フランス語特有のアクセントが染み込んでいるフランス人に担当して欲しかった」とDES Studio Parisのエンジニアに任せている。

ステレオサウンド製作陣のコダワリにより、これでようやく長年のオーディオ・ファンの愛聴盤が高音質盤で聴けるようになった。


右がSACDのディスク。CDはSACDの裏に収納されている。CDも別マスタリング。

生々しいヴォーカルには臨場感も漂う

僕は『ボビノ座のバルバラ・リサイタル'67』を、このSACDで初めて聴いたのだが、確かに「これはオーディオファンが好むアルバムだ」と思った。

開演前の「タン、タン、タン!」という、床だか机を叩いている音からライヴ感を演出する。

この録音で高音質を感じさせる最大の立役者はバルバラのヴォーカルだ。バルバラのヴォーカルだけで解像度、空気感を十分に楽しめると言っていい。実に生々しい再生音である。

このヴォーカルには会場の臨場音までも含まれているようで、いつもは「臨場感なら2chより5.1ch」と考える僕も、2ch、それもヴォーカル・トラックだけでこんなにも臨場感を感じさせるのにビックリした。バルバラの歌には、深い悲しみや、哀愁といったものがこもっているのだから、もうヴォーカルだけで聴き応えは十分である。

ヴォーカルにかぎらず、本作は1966年のライヴ録音にしては音がいい。これもオーディオ・ファンの支持を受けてきた理由だろう。

と言っても現代の最新録音のようにシルキーな音場が広がる訳ではない。当時のStereoらしい分離音である。ベースの音もオンマイク気味だ。

しかしベースは生々しくスピーカーから出てくる。アコーディオンはバルバラの歌声にさりげなく寄り添う感じ。ただバルバラのピアノだけはモッコリした音というか、あまりフューチャーされていないのだが、それがなんとも言えぬ場末の雰囲気を醸し出す。

こうしてバルバラのヴォーカルに、ピアノ、ベース、アコーディオンの音が合わさると、我が家のステレオ・システムがボビノ座の舞台を再現してくれる。50年以上もオーディオ・ファンに愛されてきたヴォーカル・アルバムというのが十分にうなづける。

2020年1月23日

バルバラ/ボビノ座のバルバラ・リサイタル'67(Single Layer SACD+CD)
ステレオサウンド社 / SACDシングルレイヤー + CD / 2ch/ 2019年12月21日発売

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