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ナイン・インチ・ネイルズ
ザ・ダウンワード・スパイラル(デラックス・エディション)

NINE INCH NAILS
THE DOWNWARD SPIRAL
[Deluxe Edition]

ユニバーサル、2枚組、輸入盤
国内盤には解説付

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DISK1はオリジナルアルバムの、SACDステレオ/SACDマルチチャンネル/CDハイブリッド盤。

DISK2はレア・トラック集でSACDステレオ/CDハイブリッド盤。

どちらもリマスターされている。

破壊的であるが、美しいアルバム

 オルタナティヴのナイン・インチ・ネイルズが1994年発表した『ザ・ダウンワード・スパイラル』のSACDであります。2枚組のデラックス・エディション。

 音楽はきわめて陰惨で、破壊的な音響。〈たのしい〜、うつくしい〜音楽〉とは対極のサウンドだ。
 しかし「キレイはきたない、きたないはキレイ」という言葉があるとおり、この音が、心に本物として届くことも事実だ。中毒症状のように。
 しかし絶望とノイズ、工場廃棄物のようなムードのなか、純粋に音楽として美しいパートも多い。そのバランスが絶妙といえる。
 始めてのリスナーは、プレイボタンを押した途端、震え上がるかもしれないが、慣れるベシ(笑)。最後まで聞き込んでしまうほど、このアルバムのクオリディは高い。全米初登場2位になったのもうなずける気がする。

トレント・レズナーの描く究極のサラウンド絵画

 さてこのSACDは、ナイン・インチ・ネイルズの〈リーダーというかそのものの)トレント・レズナー自身によってマルチチャンネル化されているところが聴きどころ。

 はっきり言ってこのサラウンド、「スゴイ!」です。今まで、ポップスではピンク・フロイド『狂気』のサラウンドが一番完成度が高いと思っていたが、この『ザ・ダウンワード・スパイラル』はその上をいく、と言っていいだろう。

 これはアートに近く、芸術的体験のような気もする。音は360度自由に配置されるが、チャラチャラしたものではない。
 サウンド・エンジニアの技術もあるトレント・レズナーは、大音響から繊細なアコースティックまで、キャンパスに絵の具を置いていくように、絶妙に配置していく。
 そのうえに、本当に蚊が飛んでいるように耳元の周りを駆け巡るサラウンドなど、動的な音の配置も絶妙だ。
 トラック10「ア・ウォーム・プレイス」では、まるで子宮の中にいるような、暖かいサラウンド感につつまれる。シンセ音だろうが、ここまで体温を感じるサラウンドも素晴らしい。

 とにかく音楽の必然としてのサラウンド化と納得してしまう。ナイン・インチ・ネイルズのファンの方は、そりゃあSACDステレオでも申し分なしですが、何か家の物を質に入れても、マルチチャンネルで聴くのをオススメします。問題は、これを十分な音量で聴けるか、ということだが(笑)。

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2006.7.23

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