尾崎亜美 HOT BABY |
これは、ステレオサウンドが尾崎亜美の名盤『HOT BABY(ホットベイビー)』をSACDハイブリッド化したものです。
SACD化はポニーキャニオンが管理するマスター音源を、ソニーミュージックスタジオの名マスタリング・エンジニア鈴木浩二氏がマスタリング。現存のマスターはPCM形式のデジタル・アーカイヴだったそうですが、後で書くように、SACDは実に聞きごたえのある音で聴けました。
『HOT BABY』は1981年の作品。尾崎亜美の代表作にして、もっとも売れたアルバムとも言われています。ジャケット・デザインこそ地味ですが、中身は凄く豪華な内容です。
まず全曲がLA録音。そして全曲が“エアプレイ”のデイヴィッド・フォスターのアレンジ。
ミュージシャンも豪華で、“TOTO”のスティーヴ・ルカサー(g)とジェフ・ポーカロ(ds)。“エアプレイ”のジェイ・グレイドン(g)もデイヴィッド・フォスター(key)とともに参加。さらにはニール・スチューベンハウス(b)、トム・スコット(sax)という布陣。
これだけのメンツを見れば、もうウエストコーストのAORそのもの。実際、『HOT BABY』はルカサーやポーカロが参加しているボズ・スキャッグスのアルバムのようなサウンドで、非常にカッコいいのです。
このようなバンドサウンドをバックに、尾崎亜美が日本語で歌っております。本場のAORのサウンドと、尾崎亜美のコケティッシュなヴォーカルが実にうまく融合しております。デイヴィッド・フォスターのアレンジが素晴らしいのはいうまでもないですが、全曲を作詞作曲した尾崎亜美の才能も忘れてはなりません。
また録音がアル・シュミット。〈グラミー賞最優秀録音賞〉を受賞したスティーリー・ダン『Aja』の3年後と、油の乗り切った時期の録音というところも見逃せません。
SACDハイブリッドの音は、音が彫り出され、空気感をともなって聞こえる感じ。
特にジェフ・ポーカロのドラムは刻みや、オカズ音などがキモチいい。
ドラムなど特にですが、AORというとソリッドな音のイメージが、このSACDを聴くと、結構アナログ・ライクな音だったなあと実感します。生バンドの“活きのよさ”も詰め込まれている感じがします。
ということで、本作は音楽と音質の両方の良さを堪能できるSACDとして、愛聴盤となったのでした。
愛聴盤となった理由は収録時間も関係しています。『HOT BABY』は全部で8曲。トータル32分ほど。その短さも気に入ったのでした。
SACDラボは高音質盤は、音質や音楽を楽しみたいので、流し聴きはしません。
そうなると32分という収録時間は、音楽やオーディオを楽しんで聴ける、また集中して聴ける時間です。これ以上長いとなかなか聴けません(クラシックは別ですが)。
なので、ちょっとした時間で、音楽/オーディオ三昧ができるのがこの『HOT BABY』です。また他のSACDを聴いた後、「まだ少し聴きたいな」と思うときも、このSACDを取り出してしまいます。結果、『HOT BABY』は他のSACDよりも聴く機会が何倍も多いのです。
曲や歌が良くて(尾崎亜美)、演奏が良くて(本場AOR)、音が良くて(高音質)、収録時間がベスト(32分)。このSACDを取り出せば幸せな時間を過ごせることは約束されたようなものです。愛聴盤となるのも当然でしょう。
2019年5月26日