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ジョン・レノン ギヴ・サム・トゥルース.（2CD+Blu-ray Disc）

ジョン・レノンの『ギミ・サム・トゥルース.』 （Blu-ray+2CD）のBlu-ray Audioの感想を書いてみる。収録されている音源は、PCMステレオ（96kHz/24bit）、DTS HD MA 5.1 (96kHz/24bit）、ドルビーアトモス（Dolby Atmos、48kHz/24bit）であるが、残念ながらドルビーアトモスを聴く環境がないので、感想はPCMステレオとDTS HD MA 5.1だけである。ご了承願いたい。

PCMステレオ。新ミックスによりいい音になった

最初に2chステレオであるが、今回はオリジナル・マルチトラックにさかのぼって新ミックスが製作されただけに、生まれ変わったようにいい音になった。

ヴォーカルはより鮮明になり、前に出てくる。音は広がりや厚みが出た。分離感（空気感）も生まれた。まるで現代の録音のように聴ける。これまでのマスターテープからのマスタリングとは一線を画す仕上がりだ。

おそらくCDでも聴き比べればオリジナルとの差がわかると思う。しかし24bitのハイレゾはなおさらいい音だろうし。ハイレゾをハイエンドのシステムで再生すれば、さらにいい音になることだろう。

加えてオリジナルのシングル、LPにあったばらつきが、良い音質でそろえられた意義も大きい。とは言っても、オリジナルの雰囲気を尊重しているミックスなので、これまでどおりジョンの作った音楽という意識は変わらない。

いい音で聴くジョンの曲はやはりいい。ビートルズ好きの友人と話していると「ジョンはビートルズ時代がなくても、ソロだけでも歴史に残るね」という会話がよく出るが、まさしくそれを再認識するPCMステレオである。

DTS HD MA 5.1も全曲が自然な音場

5.1chサラウンドも素晴らしい仕上がりだと思う。

近年はビートルズの『サージェント・ペパー』『ホワイト・アルバム』『アビイ・ロード』とサラウンド技術の向上を実感するアルバムがあったが、本作のサラウンドも素晴らしい。ビートルズの後期はわかるとしても、シンプルで極めて個人的なジョン・レノンの楽曲でも原曲の雰囲気を壊さないサラウンドができてしまうところにあらためて驚いた。

どの曲も自然な音場だからリスニングに没頭できる。「スタンド・バイ・ミー」のようなロックン・ロールでも自然なサラウンド感だ。

あえてサラウンドのタイプを分けるなら、ギター一本による「労働者階級の英雄」のような曲は、前方からの自然な広がりにどどめる。

「イマジン」「夢の夢」「ビューティフル・ボーイ」などは包み込み、浮遊感のある音場。音が2chより広く分散されるため中央のジョンのヴォーカルがより引き立つ。「鋼のように、ガラスの如く」では細部の音もよく聞け、2ch以上にダイナミックな印象に。

そして三つ目のタイプが「カム・トゥゲザー（ライヴ）」、「平和を我等に」などライヴ感のあるサラウンド。以上、あくまで大まかだが。

こういう成熟したサラウンドを耳にすると、昔のレビューのように「○○の音が動く」とか「後ろから○○の音が」と書くのが幼稚に思えてくるのであるが、実際、意識を向けさせるギミックな楽器配置はほとんどないように感じた。あえて書くなら「オー・ヨーコ」でハーモニカが動いたところか。

サブウーファーにも音が入っているが全曲ではないような気がする。メインスピーカーがB&W804なので、ハイ・カットは100kHzあたりにした。ヴォリュームは70%くらいに。聞こえるか聞こえないか正直わからない状態だが、これくらいにしておく。

ドルビーアトモスはどんなだろう

このように2chと5.1ch。両方で違う聴き方ができて楽しめる。2chは構築的で立体的な音場を再生して楽しむ。サラウンドなら広がりのある空間に身を任せる感じだ。これまで発売になってきたジョン・レノンのベスト盤の中では、一番ストレスなく、かつ楽しめるベスト盤であろう（「母」が入っていないのがちょっと残念だったが）。

こうなると、高さまで表現できるドルビーアトモスへの期待はつきない。5.1chでさえライヴ感が漂う「カム・トゥゲザー（ライヴ）」など、どんな風になってしまうのだろうか。ドルビーアトモスで楽しんでいる方が羨ましいものである。

2020年11月22日