T.レックスの傑作『電気の武者』のSACD。
言わずと知れたT.レックスの代表作。グラムロックの名盤です。 わたしが、ポップスを聴き始めたのは、このアルバムが発売されたころで、T.レックスは“ポスト・ビートルズ”として音楽雑誌に取り上げられていた。 「ビートルズの後継者として認められるなんて、どんな奴だ?」 中坊としては気になる。さっそくラジオでエアチェックしたのだが、ビートルズと全然ちがう音楽にうろたえた憶えがある。 しかし、マーク・ボランの爬虫類ぽいヴォーカル、それからブギー。「めちゃカッコいい、たまらん!」 T.レックスが“ポスト・ビートルズ”かどうかはしらないが、わたしにとって、70年代前半のロック・イコンはT.レックスでOK牧場なのである。
当時のプロデューサー、トニー・ヴィスコンティ自身によるマルチチャンネル。
『電気の武者』が傑作なのは言い尽くされているし、SACDステレオ層も申し分ないので、ここではマルチチャンネルについて書く。 うれしいことに、このSACD、T.レックスのオリジナル・プロデューサーであるトニー・ヴィスコンティ自身が、マルチチャンネルのミキシングを担当している。 ライナーには、マルチチャンネル化にさいしての、彼の解説が載っている。英語は苦手ですが訳してみました。 トニー曰く、
- 1972年録音時に、マルチチャンネルがあったつもりで、オリジナルテープからマルチにミックスしなおしたよ。
- マルチは前方の半円180度にT.レックスがいるように収めた。ボランの声はセンター。ギターは左側と右側(前方の左と右じゃない)。ストリングス、ホーン、バックコーラスは場所を決めずに。でも基本はキミの前方180度に収めたよ。
- 「Jeepster」では2本のチェロのほかにバズーンも聞えるよ。そう、バズーンさ!
- いくつかの曲では、無指向性マイクロフォンを使って録音していたんだ。そのアンビエンス音はリアスピーカーに回した。そのおかげでレコーディング・ジャムをした部屋の大きさが感じられるはずだよ。
- マルチでは、ステレオバージョンでは聞かれなかったストリングスラインやヴォーカルラインも聞けるよ。
といったところである。 「Jeepster」のバズーンは、ちょっとわたしの耳ではすぐに判断できなかったが、何回も聞けばわかるだろう。 それより、「いくつかの曲」のアンビエンス音であるが、それは「Lean Woman Blues」「Planet Queen」「Girl」「Life's a Gas」「Rip Off」などだと思われる。 これらの曲では、空間がスッと浮かびあがり、空気感の感じるマルチになるのがわかる。ごっつぉーです。 トニーさん、いろいろやってくれてありがとう、である。
2004.9.7
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