SACD レビュー

加藤訓子 クニコ・プレイズ・ライヒ II

cover

クニコ・プレイズ・ライヒ II

加藤訓子

(マリンバ、ヴィブラフォン、オルガン、マラカス・多重録音)

SACDハイブリッド
LINN
輸入・販売 ナクソス・ジャパン株式会社

2024年5月19日

加藤訓子のスティーヴ・ライヒ作品集第3弾

『クニコ・プレイズ・ライヒ II(kuniko plays reich II)』は加藤訓子のライヒ録音第3弾です。SACDハイブリッド。

加藤訓子は2011年に高音質レーベルのLINN RECORDSから『クニコ・プレイズ・ライヒ』でデビュー。アルバムはクラシックファン、ライヒのファン、そして高音質ファンに好評を持って迎えられました。

今回の『クニコ・プレイズ・ライヒ II』はその続編で、ライヒ作品の録音としては2018年の『Draming』を間に挟んでの3作目となります。

今回もミニマル・ミュージックの作曲家スティーヴ・ライヒの作品を、一人で多重録音。

収録されるのは「フォー・オルガンズ(4台のオルガン)」(1970年)、2台のヴィブラフォン版「ピアノ・フェイズ」(加藤訓子編曲・1967年/2021年)、「ナゴヤ・マリンバ」(1994年)、「マレット・クァルテット」(2009年)と、1960〜2000年代のライヒの作曲の推移を聴くことのできる内容です。

録音はLINN RECORDSのフィリップ・ホップス監修のもと、寒河江ゆうじによる録音とミキシング、CHANNNEL CLASSICS創立者のジャレッド・サックスがマスタリングと、国際的に制作されました。

ライヒの名演奏が一人の奏者で

まず「フォー・オルガンズ」。マラカスがリズムを刻みだすと、その後に電気オルガンが加わっていきます。専門的なことは分かりませんが、オルガンの和音が微妙にずれていく様は、まさにスティーブ・ライヒ。

この曲は加藤訓子がマラカス、4台のオルガンを一人で多重録音したわけですが、奏者たちがいて、一斉に演奏しているかのようです。これは他の録音でも同じです。

オーディオの話をすると、このオルガンの音を聴いただけで厚みと豊かな音質に引き込まれました。 マルチチャンネルのサラウンドでは、リアにもオルガンの音の一部が回っている感じがしました。

続く2台のヴィブラフォン版「ピアノ・フェイズ」。これはオリジナルの2台のピアノ用の曲を加藤訓子がヴィヴラフォン用に編曲したわけですが、ライヒの曲もバッハの曲のように、楽器を選ばないところがあるのでしょうか、ヴィブラフォンでも原曲の感じが損なわれず、まるでオリジナルがヴィブラフォンのための曲であるかのようです。

60年代の作品ということで、やはりミニマル・ミュージックが世に出た頃のトンガリと言いますか、面白さを感じました。この曲のサラウンドはアンビエントな広がりのような感じでした。 前方に楽器を配置して、頭上を超え後方まで広げる感じでしょうか。

詰まるところサラウンドは、個々の曲、その演奏形態にふさわしいサラウンドかと思います。サラウドについてはスピーカー、配置など個々の環境にもよるでしょうから、そこはぜひ実際に聴いて味わってほしいと思います。

収録曲の中で一番新しい曲「マレット・クァルテット」はエキサイティングで昔のライヒを思わせます。実演のようにマリンバ2台とビブラフォン2台が前に現れ、やはり奏者4人が演奏している一体感。個人的にはライヒがポップ・ミュージックの世界でも人気があったことを、この曲は再び思い起こさせてくれました。

どの曲もライヒの作品を聴く高揚感に溢れ、加藤訓子の演奏の素晴らしさを実感するアルバムです。ライヒを聴いてみたいと同時に「加藤訓子のライヒ」を聴いてみたいと思わせるアルバムでした。

収録内容 スティーヴ・ライヒ(1936-)

  1. フォー・オルガンズ(4台のオルガン)
  2. ピアノ・フェイズ (加藤訓子編曲 2台のヴィブラフォン版)
  3. ナゴヤ・マリンバ
  4. マレット・クァルテット

【演奏】 加藤訓子(マリンバ、ヴィブラフォン、オルガン、マラカス - 多重録音)

【録音】
2022年5月25-26日、6月5-6日 かながわアートホール
2023年6月1-4日 ウィステリアホール(豊橋)
収録時間: 55分

SACD層: Stereo、Multi-Channel 5.0

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クニコ・プレイズ・ライヒ II

加藤訓子

(マリンバ、ヴィブラフォン、オルガン、マラカス・多重録音)

SACDハイブリッド
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輸入・販売 ナクソス・ジャパン株式会社

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