Master Superior 2022（Limited Edition）

文・杉田ヨシオ　2022年6月19日

高音質レーベルMaster Musicのサンプラー2022年版

アジアの高音質レーベルMaster Musicが毎年リリースしているSACDハイブリッドによるサンプラーが今年もリリース。2022年版が発売になった。

これはMaster Musicがリリースしている作品の中から聴きどころを収録したコンピレーション。いちアーティストで1曲ないし2曲が収録されている。

ネットで調べてみると2022年6月現在SACDで見当たらない曲（アルバム）もあり、SACDヴァージョンで聴けるのは本ディスクだけかもしれない。その意味でも貴重であろう。Made in Japanによる限定盤。ただしブックレットやパッケージの文章、表記は中国語、英語である。

SACD層は2chステレオ。

例年以上に、いい曲の多いコレクション

さて、このコンピレーション・シリーズはこれまでも本サイトでレビューを紹介しているが、今年の2022年版サンプラーは特に熱いコレクションになったような気がする。個人的には気に入った曲が例年以上に多かった。

収録されているのは女性ヴォーカルが多く、他にもコーラス、ジャズ・サックスなど。

以下に気に入った曲をあげてみる。もちろんそれ以外もいい曲ばかりなので、興味のある方はぜひ聴いていただきたい。

トラック1、アルバムの最初はElisabeth Karsten。アコースティックなサウンドなのだが、どこかエンヤを思わせるヨーロッパ的な世界観が独特の女性ヴォーカルだ。癖になりそうなところがある。

トラック2は一転して、ノルウェーのゴスペル合唱団オスロ・ゴスペル・クワイア（Oslo Gospel Choir）の合唱で非常に澄んだコーラスが聴けた。ポップスらしくリズム隊をバックに歌い切る。中間で現れる女性ソロも清涼な歌声。心が洗われる。こういう合唱をSACDで聴く機会が今までなかったので新鮮だった。

トラック5。これまでもMastre MusicのSACDレビューで紹介したことがあるデンマークのジャズ歌手シーネ・エイ（Sinne Eeg）。今回はT. Fonnesbaekとのアルバムから収録された「Those Who Were」。ストリグスセクションをバックに歌う。その歌声が非常にいい。

トラック6。シモーネ・コップマイヤー（Simone Kopmajer）の「Time」。彼女もMaster MusicからSACDが出ているが、これは好きなトラックだ。とにかく曲がいいと思う。メロディがいい。これを聴いて何かシモーネ・コップマイヤーのアルバムを聴いてみたくなった。

トラック10。オーストラリア出身のジャズシンガー（兼ベーシスト）のニッキ・パロット（Nicki Parrott）の「Laughter In The Rain」。ニッキ・パロットはヴィーナスレコードで存じの方もいるかもしれないが、Master Musicにも登場。これは70年代の名曲をカバーしたアルバムからの1曲で邦題「雨に微笑みを」。ニール・セダカの名曲が原曲どおりの哀愁漂うトラックで嬉しい。

ブックレットには各曲の収録アルバムのジャケットも載っている。

インスト系もサックス、ピアノなど充実

ちょっと急ぐがトラック１2のマレン・モーテンセン（Malene Mortensen）「Empty Skies」、トラック13、デンマークのジャズ女王Josefine Cronholm & IBIS「Silent Moon」も同様に聴き応えがあるヴォーカルだった。これらもいい曲だ。

こう書いてきて、自分では女性ヴォーカルで気に入ったことがわかる。女性ヴォーカルというとアメリカや日本ではR&B風なヴォーカルが多くてちょっと世代的に疲れるところがあったが、ここに収録されているのは、どれもナチュラルな歌い方で、かつ曲もいいところが気に入った。

もちろん他に、サックス奏者Aaron Heick、ノルウェーのピアノ奏者KetilBjørnstadなど、インスト系も充実の内容だ。

各アーティストのアルバムからベストの曲を選曲しただろうから、サンプラーとしてはもちろん、1枚のアルバムとしてもいい曲に出会える。これがSACDなのだからなおさら満足感がある。