藤田恵美『Headphone Concert 2022』SACDハイブリッド
2023年7月10日
「ヘッドフォン・コンサート」第2弾 ライヴの躍動がスタジオ録音の高音質で
藤田恵美のヘッド・フォンコンサート第2弾が登場した。第1弾のフィジカルがUHQ-CDだったのに対して、今回はSACDハイブリッドで発売である。
「ヘッドフォン・コンサート」というのは、奏者が観客の目の前で演奏するライヴ録音でありながら、ライヴのための音響設備はなく、マイクなどの機材全てがスタジオ録音用のものを使ったコンサートのことである。
お客さんは歌手や奏者を見つつも、音はラインに接続したヘッドフォンで聴く。その音は今レコーディングされている音と同じクオリティだ。
「コンサートとレコーディング。同じ土俵では比較できない、それぞれの良さを、どこまで近づけて成立させられるのか?」
そんな問いを持ったことから生まれた試みだという。
結果は第1弾を聴いてわかったとおり、オーディオファイルに好感を持って迎えられた。そして第2弾はいよいよSACDハイブリッド。スタジオ録音の精密さとライブ演奏の緊張感、それが一体化した音がよりハイファイで聴けそうだ。

まず藤田恵美のウォームなヴォーカルが浮かび上がる。アコースティック楽器の音も繊細。解像度があり、粒たちの良い音だ。しかしデジタル臭さはなく、アナログ録音のような柔らかな空気感、有機栽培の野菜を差し出されたような純度の高い音である。
演奏はピアノ、アコーディオンに宇戸トシヒデ、アコースティック・ギターに西海孝、ヴァイオリン&トランペットに武川雅寛、ベースに河合徹三、パーカッションに佐藤唯史。彼らの緻密なアンサンブルが手に取るように聴けるのもこの録音ならではだろう。
ステージ写真をみると演奏者も全員ヘッドフォンをつけている。そしてステージの上に——各音が混ざるのを避けるためだろう——離れて位置している。しかしミックスされた音は、藤田恵美のヴォーカルと寄り添うようにまとめられていて聴きやすい。
オーディオ・マニアには自慢のシステムを高音質で鳴らせるSACDかと思う。音を楽しみつつ、藤田恵美のヴォーカルにくつろげる。ゆったりとした時間を過ごせる1枚である。
個人的な好みではトラック10の、堺正章が歌った「街の灯り」が意外な選曲で嬉しかった。アンコールのトラック12「Perfect(Encore)」では観客の拍手が入ってライヴを実感する。

ディスクは「音匠仕様」。写真では見にくいがヘッドフォンのイラストも描かれている。
- All My Loving
- 冷たい雨
- I Love You
- シーサー
- My Grandfather's Clock
- ダンスはうまく踊れない
- Moon River
- Sofa
- Red is the Rose
- 街の灯り
- Imagine
- Perfect(Encore)