八代亜紀:哀歌-aiuta-(CD/SACDハイブリッド)
2024年8月21日
ステレオサウンドが八代亜紀のブルース・アルバムをSACDハイブリッド化
八代亜紀は1971年にデビュー。残念ながら2023年に亡くなっている。
八代亜紀と言えば歌謡曲、演歌が頭に浮かぶ人が多いだろう。しかしその一方でジャズやブルースも歌うことをと知っている人も多い。特に近年、若い世代にも聴かれているようだ。
今回ステレオサウンド(Stereo Sound)がSACDハイブリッド化した『哀歌-aiuta-』は、八代亜紀が本家米国のブルースや日本のいわゆる歌謡ブルースを歌ったアルバムで、2015年にオリジナルが発売された。
収録されているのはアメリカの古典的なブルースが5曲、昭和歌謡ブルースが4曲、そして八代亜紀のために書き下ろされた21世紀日本産ブルースが3曲。
SACD化は日本コロムビアの全面協力のもとに行われた。制作は日本コロムビアのチーフ・エンジニアである田林正弘氏。
音源は既発売のCDやハイレゾのものではなく、LPレコード用に作られた5.6MHz/DSDマスターを用い、アナログ領域で必要最低限の音調整を施した上で制作されたという。
SACDはハイブリッドなので、SACD対応プレーヤーならSACDとして、通常CDプレーヤーならCDとして聴ける。CD層はSACD層とは別系統でCDにふさわしいマスタリングが行われている。
ディスクは下写真のとおり、音質を考えてグリーンにコーティングされている。
現代的演奏をバックに数々のブルースを歌う八代亜紀
聴いてみると、八代亜紀のヴォーカルがくっきりと迷いなく浮かぶ。
演奏はドラムス、ピアノ、ベースなどは重心の低い音。アナログレコードのようなエッジの柔らかい音である。
最初の「St.Louis Blues」や「The Thrill Is Gone」を聴くと、八代亜紀が演歌歌手という概念が飛んで、その道のシンガーのアルバムを聴いているような気になった。「The Thrill Is Gone」ではリードギターも聴きものだ。
冒頭2曲でのアーシーなムードは3曲目の「別れのブルース」で、ぐいっと日本の歌謡ブルースの世界に持っていかれる。しかしアレンジはジャズ風でヌケ感があり、現代的な昭和歌謡になっている。いずれにしても、こういう楽曲でも音質がいいので、耳を離すことはできない。オーディオ的快感はトラック1から持続中である。
ブラスセクションが活躍する「フランチェスカの鐘」のあとは、八代亜紀のために書き下ろされた3曲が並ぶ。
「Give You What You Want」(THE BAWDIES 提供)はロック色の濃いブルース。一瞬デビュー時のストーンズがカバーしていそうな錯覚を覚えるが、八代亜紀のための書き下ろしだ。
「ネオンテトラ」(横山剣 提供)はイントロこそ和風だがワルツに乗ったメロディが秀逸。「命のブルース」(中村 中 提供)は、それこそ日本人に染み入る哀しみのブルースだ。
このあとも藤圭子が歌った「夢は夜ひらく」をジャズアレンジで歌うなど、楽しめたアルバムだった。
八代亜紀がブルースを歌うことにも注目だが、聴いていると個々の楽曲そのものを楽しんでいた。SACDの音のよさを味わいながら。
- 収録曲
- 1 St.Louis Blues
- 2 The Thrill Is Gone
- 3 別れのブルース
- 4 フランチェスカの鐘
- 5 Give You What You Want(THE BAWDIES 提供楽曲)
- 6 ネオンテトラ(横山剣 提供楽曲)
- 7 命のブルース(中村 中 提供楽曲)
- 8 The House of the Rising Sun
- 9 夢は夜ひらく
- 10 Bensonhurst Blues
- 11 あなたのブルース
- 12 Sweet Home Kumamoto