ERIC CLAPTON
SLOWHAND

1977年作品
輸入盤、UNIVERSAL
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角の丸いプラケース。
ブックレットは3枚折りの簡単なもの。うち2面がアナログジャケットの見開き部分のデザイン。
クレジットだけで歌詞はなし。
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ギターのまえに、SACDの音にノックアウト
言うまでもなく、本作はエリック・クラプトンの傑作アルバム。
しかしプレイボタンを押すや、音楽より先にSACDの音にノックアウトされてしまいました。レコード以上にコクと肉汁がたっぷりの、太いアナログ風サウンド。とくに重たいドラムとベースがたまりません。
それでいて繊細な肌触りもあるのですから、 こんな音で70年代のロックが聴ける興奮に包まれてしまいました。ですから、このアルバムはSACDの音の話からしたいと思います。
オリジナルプロデューサーによるサラウンドミックスは自発的成長のサラウンド
マルチチャンネルで聴いてみました。
サラウンドミックスは、オリジナル・プロデューサー、グリン・ジョーンズによるもの。グリン・ジョーンズはストーンズやビートルズの「レット・イット・ビー」で活躍したエンジニアです。
そのグリン・ジョーンズが自らサラウンドミックスしているので、どおりで「お仕事的」なところが感じられません。2ch『スローハンド』が自然発生的にマルチチャンネル『スローハンド』に成長したような完成度の高さです。
前方にヴォーカルとリズム隊、クラプトンのギターをゆったりと配置。女性コーラスは、左右とリアからサポート。その合間にサイドギターなどを薄く。ときおりリアから直接音でサイド・ギター、といったデザイン。
マルチチャンネルは前方の空間が広いので、2chとは比較にならないほど、楽器の周りにスペースができる。重量があり繊細な音が、そのスペースでゆったりと鳴る。各音がぶつかり合ったり、重なったりしない分、より大きさと厚みを増しますね。
またバッキング音など、2chでは聞きとりにくかった、または聞くことができなかった音も聞くことができて感激であります。
2chステレオも音自体は感激ものだったけれど、マルチチャンネルを聴いたあとでは、音が太く厚いだけに、詰め込まれた窮屈感を感じてしまうのです。 できればマルチチャンネルでのリスニングがおすすめです。
こんな音と空間で聴くクラプトン、大人のロックここにあり
最後に音楽の話ですが、もちろんクラプトンの演奏も最高です。
「コケイン」はクリーム時代のような、リフがカッコイイヒット曲。続く「ワンダフル・トゥナイト」は80年代クラプトンを予測する名作バラード。
最後の「ピーチズ&ディーゼル」は、「レイラ」路線の哀愁あるインスト曲。レイドバックしたクラプトンで幕を閉じます(この曲でのマルチチャンネルのギターの音と広がりも素敵)。
このアルバムは、ガッシリとした構成力で、ギターの神様と言われながらも、実は派手なギタープレイよりも、ブルースやカントリーにどっぷり腰を落とした音楽全体が魅力だと思います(とはいっても、ところどころ現れるギターには「きたーぁ!」と唸ってしまいますが)。
『スローハンド』は、ジャケットからも「ギター小僧御用達」のアルバムと勘違いされそうですが、いえいえ、これぞ普通のロックファンもしびれるアルバム。その落ち着きは、10代の時よりも今のほうが確実に味わえる、これぞ「大人のロック」です。
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エリック・クラプトンのSACD
 2010.7.11
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