REVIEW LPレコード

鬼太鼓座:富嶽百景・抄録 アナログマスター・ダイレクトカット

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鬼太鼓座:富嶽百景・抄録 アナログマスター・ダイレクトカット(LP)

LPレコード 33 1/3回転 180g重量盤

限定生産

制作・発売:株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント

企画・販売:株式会社ステレオサウンド

発売日:2023年9月30日

ステレオサウンド・ストアで見る

2023年10月30日 杉田ヨシオ

オーディオ・ファンのレファレンス 鬼太鼓座の『富嶽百景』がアナログ・マスターからLP製作

ステレオサウンド(Stereo Sound)が鬼太鼓座の33回転LPレコードを発売した。『鬼太鼓座:富嶽百景・抄録 アナログマスター・ダイレクトカット』である。

日本の誇る和太鼓集団、鬼太鼓座の録音は、これまでオーディオ・ファンに圧倒的な支持を得て、アルバムはオーディオ・ファンのレファレンスとして歓迎されてきた。

今回ステレオサウンドが製作したのは1997年のアルバム『富嶽百景』から6曲を厳選してアナログレコードにしたものである。

『富嶽百景』が制作された1997年はデジタル録音が中心であったが、録音、ミキシングを担当した高田英男氏は鬼太鼓座の太鼓の音を生々しく捉えるには、アナログ技術しかないと、録音からミックスまでの工程をできるだけアナログテープレコーダーを使用して製作したそうだ。

『富嶽百景』は当時CDで発売され、オーディオ・ファン向けにはダイレクト・カッティングCDも限定発売される。

このステレオサウンドのレコードは、当時録音エンジニアだった高田英男氏がアナログ・レコードの限界の音を目指して監修したものだ。

LP用に『富嶽百景』から6曲を選曲。カッティングは1インチ2トラック・アナログ・マスターテープからじかにラッカー盤に溝を刻んだ。カッティングエンジニアはワーナーミュージックマスタリング/ミキサーズラボの北村勝敏氏。

使用機材など、入念な準備が施されたことは言うまでもなく、それらについては高田英男氏の製作レポートをご覧いただくとして、一つ書き添えておくと、各曲のマスターテープは1本のテープに別々に収められているため、カッティングに際しては、3本のテープ・リールを回すスチューダーA80を3台使用。

それらを同期させ、カッティングが始まるとノン・ストップで順番に再生しカッティングしたのだという。まさにマスターテープ再生によるダイレクトカッティング。

その調整にもまた細かい作業(ゴーストへの対処など)があり、それは高田氏の製作レポートや小原由夫氏のライナーに見聞の様子が載っているので、詳しくは読んでもらいたい。ではさっそく聴いてみよう。


針が飛ぶのではないかと思うほどの太鼓の響き。究極のアナログレコードの再生音

迫力はもちろん、音つや解像度に毎秒カイカン

このレコードを聴いてやはり僕はオーディオ・マニアであると実感した。音の良さ、分離感、迫力にうっとりして、それこそ毎秒、再生音を浴び、放射される音場に浸るのがカイカンだった。

どんなに好きな音楽でも、音質が悪いと途中で針を上げてしまう。これがオーディオ・マニアの正直なところであろう。

その意味でこのレコードは最初から最後まで音の鮮度、艶、立体感に舌なめずりをし、凄まじい重低音を鳴らすわがオーディオ・システムに酔った。

それが太鼓の一打、一打なのだから、トラックというより、音、音、音が聴きどころと言える。

太鼓だけでなく三味線や尺八も出てくる。その音も素晴らしい。

そして最後に思った。

確かに、自分は好きな音楽でも音質が悪いと針を上げてしまうオーディオマニアだ。

しかしどんなにいい音でも、音楽に興味を持てないと、LPレコードのA面B面を聴き通すことはしない(オーディオ・マニアにそんな時間はない)。

それが、このレコードではまったく退屈することなく両面を聴ききってしまった。

思った。僕は鬼太鼓座の太鼓や尺八、三味線の音楽が好きなんだ、と。

やはり日本人の血がそうさせるのだろうか。これまでロックやクラシックばかり聴いていた自分だが、これは新しい発見だった。

鬼太鼓座の音を演奏現場からこの部屋にまでもたらしてくれた製作者の方々に感謝したい。

収録内容

Side A
1.鼕々(とうとう)/Toto~坎(かん)としてそれ鼓を撃つ~
2.三国(みくに)/Mikuni
3.弓ヶ浜(ゆみがはま)/Yumigahama

SIDE B
1.明暗(みょうあん)/Myoan
2.富嶽百景(ふがくひゃっけい)/Fujiyama
3.鬼太鼓囃子(おんでこばやし)/Ondeko-bayashi

スーパーバイザー:高田英男(ミキサーズ・ラボ)
カッティング・エンジニア:北村勝敏(ミキサーズ・ラボ)
テクニカル・エンジニア:菊地功(ミキサーズ・ラボ)、加藤拓也(ミキサーズ・ラボ)
1インチ2トラック・アナログテープレコーダー・システム・エンジニア:大橋正路(日本総合制作)
ライナーノート:小原由夫
LPレコード製作リポート:高田英男

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鬼太鼓座:富嶽百景・抄録 アナログマスター・ダイレクトカット(LP)

LPレコード 33 1/3回転 180g重量盤

限定生産

制作・発売:株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント

企画・販売:株式会社ステレオサウンド

発売日:2023年9月30日

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