イタリアの指揮者、クラウディオ・アバドのマーラーは、シカゴ交響楽団やウィーンフィルを振った全集があったが、このディスクは近年ベルリン・フィルとすすめているもので、2004年6月の演奏です。SACD/CDハイブリッドで発売されました。
マーラーのパラノイア
マーラーの交響曲6番は、声楽なし、4楽章形式の古典的交響曲のスタイルで作曲されています。でも中身はやっぱりマーラー。各楽章ともぶっとんでおります。
マーラーの交響曲はどれもそうですが「なんでこんな音楽をつくれるのか?」と聴くたびに思います。
当時、こんな作品をつくって、他人がわかってくれるとはとうてい思えない。すごい勇気だ。
マーラーは指揮者として有名な人物でしたが、もし指揮者としての名声がなかったら、マーラーの作品は世に受け入れられただろうか?
あー、でも、やっぱり受け入れられただろうな。こんなにすごいのだから。
第2楽章と第3楽章の入れ替え
マーラーの交響曲第6番は、ふつう第2楽章「スケルツォ」、第3楽章「アンダンテ」で演奏されるのですが、このディスクでは入れ替わっております。
マーラー自身、最後まで楽章の順番にまよっていて、最近のマーラー研究ではどちらの順番で演奏してもOKになったとか。
ですので、アバドは、第2楽章をゆっくりした「アンダンテ」、第3楽章を躍動感のある「スケルツォ」で演奏しています。
ふうむ。僕としては、活気ある第1楽章のあとも、躍動感のある「スケルツォ」とつなげて、マーラーのパラノイアがさらに強調される従来の順番が好きですが、このディスクのように第2楽章「アンダンテ」でいったん落ち着くのもいいかもしれませんね。これも慣れですから、じっくりと聴いていきましょう。
pppからfffまで、ダイナミックレンジ抜群のSACD
マーラーの交響曲は、オーディオ的にかなりのダイナミックレンジが必要とされますが、ピアニッシモの室内楽的アンサンブルから、フォルテッシモの巨大な打楽器群の響きまで、このSACDでは見事に再現されます。コントローラー片手にボリューム調節しながらのほうがいいかも(笑)
第4楽章にでてくるハンマーの打撃もすごい音量(しかし、なんでこんなところでハンマーが出てくるのだろう。それも2回も。不思議な人だマーラーは)。
マルチチャンネルでは前方にひろくベルリン・フィルが広がり、空間もゆったりするので、たいへん聴きやすい。サブウーファーはティンパニや大太鼓の音をうけもっているようです。
このディスクのアバドの演奏はわたしは好きです。おとなしくもないし、やりすぎでもない。でもけっして中庸でもない。交響曲第6番の魅力が伝わってくる演奏だと思います。
とくに第4楽章は、わけがわかんない楽章で、平坦でもあり、この楽章をうまく飽きさせないでやっていると思います。実際の演奏は難しそう。
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2005.7.04
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