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フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ
ベートーヴェン:交響曲全集

B008L1GZOK
Beethoven : The Symphonies
Live from Rotterdam, 2011

Frans Brüggen
Orchestra of the Eighteenth Century]

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録音2011年10月、デ・ドゥーレン(ロッテルダム)でのライヴ
SACDハイブリッド5枚組

箱入り。ブックレット付き。

SACD1 79'31"
交響曲第1番
交響曲第3番《英雄》

SACD2  68'50"
交響曲第2番
交響曲第4番

SACD3 75'49"
交響曲第6番《田園》
交響曲第5番《運命》

SACD4 68'44"
交響曲第8番
交響曲第7番

SACD5 65'06"
交響曲第9番《合唱つき》


参考
上写真は【国内盤仕様】のもの。国内盤特典でDVD(白いディスク)付き。本レビューのAmazonへのリンク商品ではありません。DVDには録音の簡単なドキュメンタリー映像。

ブリュッヘンの新録音全集が、SACDでリリース

 本作は古楽器によるベートーヴェン交響曲全集のSACDです。
 古楽器界の雄フランス・ブリュッヘンが、手兵18世紀オーケストラを振って、およそ20年ぶりに新全集を録音しました。
 すべて2011年ロッテルダムでのライヴ録音。マルチチャンネルも収録しています。

SACDにして初めて知った(?)弦楽器の古色な響き

 1980年代に入ると、古楽器によるオーケストラ曲が商業ベースで売れるようになりました。
 当時CDで聴いていた古楽器、それも弦楽器は、金属的な音が特徴でしたが、このSACDの高音質で聴いてみると、かなり違います。
 このSACDの弦楽器は、金属的な響きがなくなり、古色な透明感があります。

 「手応えがない」といえば、そのとおりで、たとえば《英雄》の第1楽章など、従来の響きで、高揚感を感じた部分も、いまひとつ迫るものが薄味です(管楽器はあまり変らず)。

 しかし、この古色な響きに慣れると、あらためて古楽器の面白さを堪能できると思います。大げさに言えば、CDではなく、SACDにして初めて知った古楽器の音、といえましょう。

フロントが、ふっくらと立体的になるマルチチャンネル

 しかし、これも「マルチチャンネルで聴いて」という条件が付くかもしれません。
 なぜならSACD2chにすると、弦楽器はちょっと金属的な響きに思えるからです。昔のCDに似ている感じです。

 また2chでは、フロントの音像がペッタリしてしまいますが、マルチチャンネルでは、前方のステージ(音像)が立体的になるところが聴きどころです。
 まるで日干しをした布団のように、ふっくらと、みずみずしい空間です。この空間ですから、古色の弦楽器が栄える、とも言えます。

第九、オーケストラに人間の声が加わる醍醐味もサラウンドで実感

 フロントが魅力的ですので、全体ではホール・トーンは強く感じられないサラウンドに思ってしまいがちですが、それは交響曲第1番から第8番までの話。
 交響曲第9番〈合唱〉の第4楽章。
 例のバリトンによる「おお友よ、このような音でなく〜」という声があらわれると、バリトンの残響がリスニングルーム全体に見事に広がります。
 「楽器と人声の音の質が、こんなにもちがうのか」とサラウンドで実感してしまいました。異質な音の共存は、この第9交響曲の革新性をあらためて思い知らされました。

 第4楽章全体をみても、合唱とオーケストラのバランスが、とてもいいのも、このSACDの特徴だと思いました。
 結局、このSACDマルチチャンネルのサラウンドは、フロントの立体感よし、全体の残響もよし、ということになります。

ブリュッヘンの解釈

 最後になりましたが、ブリュッヘンの演奏は、古楽器によくみうけられる、軽やかに疾走する、という分けではなく、わりと70年代以前の重厚路線を含む解釈に思いました。これは、これから何度も聴いて、いろいろ考えたいと思います。

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2013.2.18