ピエール・ブーレーズ指揮ニューヨーク・フィルハーモニック バルトーク:管弦楽のための協奏曲、中国の不思議な役人 |
本作のオリジナルは1973年の録音。SQ4チャンネルで発売になりました。SACDにはその4チャンネル(Quadraphonic)音源をマルチチャンネルに収録しております。
カップリングには「中国の不思議な役人」。こちらも当時SQ4チャンネルでリリースされたものです。(オリジナルLPでは「舞踏組曲」とカップリング)。
実は2002年に早々とマルチチャンネル収録のSACD(シングルレイヤー)が発売されたのですが、それはオリジナルのQuadraphonic録音を収録しておらず、前方が音源で後方はホールトーンで広がりを出したマルチで残念でした。
あれから16年。2018年にようやくオリジナル・アナログ・テープからマイケル・J・ダットンによりリマスターされQuadraphonicが収録されました。
ジャケットを見ても楽器配置が予想できるのですが、ブックレットに収録の写真(右)を見てもオーケストラが360度に配置されているのが確認できます。
早速マルチチャンネルを再生してみると、嬉しや、Quadraphonicが再生されました。ジャケットにあるように、前方にヴァイオリンのセクション、リア左に木管群とトロンボーン、リア右にトランペットなど。
ちょっと聴いただけでは配置が分かりにくいでしょうが、ご安心ください。ブックレットに各楽器のスピーカー配置が一覧表で載っております。割り当てられたマイク、トラック・ナンバーまで記述されているマニアックさ。
この一覧表を見ながら聴くと本作のサラウンドが理解しやすいです。リアの音でも残響が前スピーカーでいくらか鳴るわけで、その響きのせいで全体のつながり感はあると思います。
同時収録のバレエ音楽「中国の不思議な役人」は1972年録音で、こちらもQuadoraphoincが制作されました。
ただ「管弦楽のための協奏曲」のように実験的な360度配置ではなく、ホールトーンを収録したオーソドックスなサラウンド。ニューヨークのフィルハーモニック・ホールの残響が後方から豊かに響きます。ただ最後のところで登場する合唱は後ろから出てきます。録音では客席で歌っていたのかもしれません。
バルトークが30代後半に書いたバレエ、パントマイムのためのこの曲は、ストーリーの内容から退廃的で、時にエロティックな雰囲気が漂っていますが、ちょっとホラー映画のサウンドトラックのように出来事を想像できるので、音楽は追いやすいです。
昔は重い曲に思っていましたが、今SACDで聴くと、結構わかりやすい曲だなあと思ってしまうから不思議です。最後の中国の官吏(マンダリン)の死の部分になるでしょうか、うなり声のような合唱が後方から出てくるところはうまい演出だと思いました。
音質はDutton VocalionのSACDでこれまでも感じていた、クセのないナチュラルな仕上がり。今日的な高音質を強調するでもなく、自然な仕上がりで聴いやすいです。
2018年12月27日