パーヴォ・ヤルヴィ、NHK交響楽団 20世紀傑作選1バルトーク三部作:弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽他 |
これはパーヴォ・ヤルヴィがNHK交響楽団を指揮してバルトークの管弦楽曲を演奏したアルバムです。DSDレコーディングによる2chステレオ。収録は2017年9月27日と28日、サントリーホールにおけるライヴ・レコーディングです。
収録されているのは、1939年作曲の「弦楽のためのディヴェルティメント」、1923年作曲の「舞踏組曲」。そして1936年作曲の「弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽」。
1曲目の「弦楽のためのディヴェルティメント」、第1楽章でいきなり弦楽が歯切れよくリズムを刻んでいきます。
目の前にオーケストラがくっきりと浮かぶ音場。これはオーディオ・ファイルが好んだ昔のデッカ録音の音に通じるものがありますが、こちらは最新録音、それもDSDレコーディングなので、同じ目の前に浮かぶ音場と言っても、もっと柔らかくコクのある音に感じました。しかし近視眼的なだけでなく、ソロでは空間の広さも感じます。
それにしてもこの「弦楽のためのディヴェルティメント」、弦楽の音が重厚です。
ヤルヴィによるライナーノートを読んでみると、「弦楽のためのディヴェルティメント」は室内オーケストラのために書かれた曲ですが、実はバルトークは大編成のオーケストラを想定していたのではないか。そんな推測からNHK交響楽団の大編成オーケストラで演奏してみたのだそうです。
確かにシンフォニックで厚い弦楽の響きは、この曲に新たな味わいをもたらしてくれた気がします。SACDで聴く上でも、この上ない音であります。
続く「舞踏組曲」は民族的な旋律で、親しみやすい曲であることを気づかせてくれました。有名な「弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽」は第1楽章のダイナミックレンジの変化や、バルトークならではの独特の響きに魅せられました。
これらを聴くとマルチチャンネルが好きな筆者も、2chの構築性に満足を覚えたのでした。2chがこのように鳴ってくれるのなら、あとは自室のリスニングルームの響きさえ良ければ、マルチチャンネルとはまた違った、いい音に包まれるのではないか。そんな楽しみを感じさせるSACDでした。
2019年7月24日