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ルドルフ・ケンペ、シュターツカペレ・ドレスデン
R.シュトラウス:管弦楽作品全集<タワーレコード限定>

R.シュトラウス: 管弦楽作品全集<タワーレコード限定>
ルドルフ・ケンペ、シュターツカペレ・ドレスデン

SACDハイブリッド/2ch
TOWER RECORDS DEFINITION SERIES

発売:2020年12月25日

Tower Records

2021年2月18日

タワーレコードの限定SACDハイブリッドで、ルドルフ・ケンペ指揮シュターツカペレ・ドレスデンによる『R.シュトラウス: 管弦楽作品全集』が2020年12月に再発売された。これは2年前の2018年12月に発売された9枚組セットの再プレスである。音源も2018年盤と同じ当時の最新マスタリング音源を使用。

“ツァラトゥストラ”は最初だけではなく、その後もいい

R.シュトラウスと言えば、交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」が有名だ。映画『2001年宇宙の旅』の冒頭に使われ、宇宙の起源を描写したような荘厳な音楽は誰もが知るようになった。

しかし映画で使われた部分だけが有名になってしまったことで弊害も起きる。クラシックをかじり始めた時は、「“ツァラトゥストラ”でいいのは、映画で使われた最初の部分だけだね」などと分かったように言っていたものだ。

しかしクラシックを聴き込んでいくと、またR.シュトラウスに親しむようになると、「“ツァラトゥストラ”は最初だけではなく、その後もいい」ということに気づく。筆者がまさにそうで、気づくのに40年近くかかってしまった。そのほかの管弦楽曲もいい曲に違いない。

かくしてR.シュトラウスの管弦楽曲の「食わず嫌い」に終止符を打つために、SACDを聴いてみようと思ったのだった。

ケンペのSACDは売り切れていたが……

調べてみると、ルドルフ・ケンペがドレスデン・シュッターツカペレを指揮した1970年代の録音が名盤だという。

それらは当然SACD化されていて、最初は2012年にワーナーミュージック(旧EMI)からSACDシングルレイヤーで発売になり、続いて2018年にタワーレコードが限定SACDハイブリッドで発売した。タワーレコードの方は9枚組であり、ワーナー盤にはなかった協奏曲なども加えられ、より完璧なセットだった。

SACD愛好家の筆者としては、このタワレコのセットを欲しいと思ったのだが、時すでに遅し、限定盤ゆえに売り切れになっていた。「もう少し早く興味を持てば、買えたのに!」と、おのれのふがいなさを悔やんだものだ。

そうして月日がたったが、昨年2020年の暮れに朗報が飛び込んだ。なんとタワーレコードが『R.シュトラウス: 管弦楽作品全集』SACDハイブリッドを再発売するという。それだけ高音質ファンからの要望が高かったのだと思うが、なんだか自分のためにタワレコが出してくれたように思えた。今回も限定発売だから、もう逃したくない。迷わずポチした。

伸びやかな音で晴朗な音場

手元に届いてから、ディスク9枚をひととおり聴いてみた。

音質は、まず伸びる音に魅了された。楽器音がスピーカーからスパーと飛び出してくる感じ。結果、クリアで晴朗な音場である。またエネルギー感があるから、金管などかなりの迫力だ。木管も含めてシュターツカペレ・ドレスデンの特質がそのまま伝わってくるかのよう。解像度もあると思う。

弦楽器が今日の録音と比べると、やや硬質な気がするが、これはこれで非常に素直な鳴り方である。70年代のアナログ録音の良さをそのまま伝えているかのような奇麗な再生音。要はオーディオとして非常に心地良い音に浸れる、と言うことである。

ケンペだから好きなれたR.シュトラウスの管弦楽曲

感心するのは音質だけではなく、演奏もである。やはりケンペとシュターツカペレ・ドレスデンの演奏だと感じるものがある。

R.シュトラウスの管弦楽曲を「食わず嫌い」だったと書いたが、実はCDでもSACDでも有名な曲は聴いていた。R.シュトラウスの管弦楽曲はオーディオ・チェックに人気だったし、カップリングとして収録されることも多いから、筆者もそれなりに聴いてきた。「今度こそ好きになるのではないか」と期待しつつ。しかし、どの指揮者やオーケストラでもピンとこなくて今日まで来てしまったのが現状だった。

その点、このSACDで聴くケンペの演奏だと、とても「分かる」というか、「感じる」というか、「身に迫る」と言うか、要するに曲の良さ、曲のすごさを実感できたのだった。これは高音質とセットで聴いたからとも言えるが、やはりケンペには曲に肉薄する何かがあるのだろう。

繰り返し聴いてみた「ツァラトゥストラはこう語った」「アルプス交響曲」「家庭交響曲」

9枚のディスクはひととおり聴いたが、「ツァラトゥストラはこう語った」「アルプス交響曲」「家庭交響曲」はもう一度聴いてみた。

「ツァラトゥストラはこう語った」は最初に書いたとおり、映画に使われた後もいい。特に後半部分。もうこの曲に慣れた自分を感じる。

「アルプス交響曲」は、他の演奏だとどうしても通俗的で描写曲のように聴いてしまったのだが、ケンペだと管弦楽の宴のような妙味を味わえた。この曲がオーディオ・マニアに人気なのも分かる。R.シュトラウスの時にたくみな、そして時に超がつくほど前衛的な管弦楽法。それらが音のスペクタクルとしてこちらに伝わる。

「家庭交響曲」は2回目も、延々と続く管弦楽のうねりに圧倒されるばかりだが、これまでの他の演奏家のCD、SACDでは、それさえも感じられず、掴みどころがなく終わったのだから、ケンペの演奏、やはり何度も聴いてみる価値がありそうである。と言うか何度も聴いてみたくなる。

他にもディスク9に収録された「ブルレスケ ニ短調」「家庭交響曲余録(パレルゴン)作品73」「パンアテネの行列 作品74」にも驚かされた。初めて聴いたが、ピアノをともなう、まるでピアノ協奏曲のような3曲は、R.シュトラウスのまた違う側面を聴かせてくれて、独創的な作曲家だったとあらためて思った。

このセット、じっくりと聴き込んでいきたい。いい音に浸りながら、新たな音楽の感動と出会える。こんないいことはない。

R.シュトラウス: 管弦楽作品全集<タワーレコード限定>
ルドルフ・ケンペ、シュターツカペレ・ドレスデン

SACDハイブリッド/2ch
TOWER RECORDS DEFINITION SERIES

発売:2020年12月25日

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