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アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)クルト・マズア指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、ロマンス第1番&第2番

ディスク
Beethoven
Violin Concert / Romances

Anne-Sophie Mutter
Kurt Masur/New York Phil


2002年5月 ライヴ録音
輸入盤 DG

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SACDレイヤー
・96kHz/24bit PCMStereo
・96kHz/24bit PCM5.0 Surround
CDレイヤー
・44kHz/16bit PCMStereo

角の丸いプラケースにブックレット。ブックレットにはJoachim Kaiserとムターとの対談(英独仏語)。ムターとクルト・マズアのカラー写真が、そこそこにレイアウト。

収録曲
1. ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61 2. ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第1番ト長調op.40
3. ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番ヘ長調op.50

ムター、2度目のベートーヴェン

 アンネ=ゾフィー・ムターの23年ぶり、2度目のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲です(1度目は1979年で、16歳)。
 今回はクルト・マズア&ニューヨーク・フィルとの共演。ニューヨーク・フィルの本拠地、エイヴリー・フィッシャー・ホールでライヴ録音です。SACD層はマルチチャンネル収録で、SACD2chも新ステレオ・ミックスです。愛らしい小品「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス」第1番と第2番も収録。

カラヤンの秘蔵っ子から、年齢を重ねた演奏家へ

 第一楽章は遅めのテンポですので、この楽章に“定番的ベートーヴェンの雄大さ”を求める耳には、最初、エンジン・ブレーキをかけている演奏のように感じました。
 でもテンポが遅いということは、ムターのヴァイオリンの動きが、細部まで、いち音いち音、頭のなかに張り付いていく感覚があります。

 第二楽章は最たるもので、カデンツァでのヴァイオリンの再弱音は、途切れる寸前の糸のよう。その音色の「かすれ具合」「枯れてる感じ」がいい。
 バックのオケはほとんど鳴らさない状態なので、第二楽章はベートーヴェンの音楽じゃなくて、ムターの声を聴いているような感じにとらわれました。とくに第三楽章に繋がるカデンツァには息を呑みます。

 第三楽章もむやみに白熱せず、でも超絶技巧はきっちり。年齢を重ねた演奏家ならではの表現力を感じました。
 これがカラヤンの庇護から遠く離れた、ムターのやりたいことだったのかもしれません。(そこまで極端ではないですが)ちょうど晩年のバーンスタインやチェリビダッケのような、スローテンポならではの音楽表現を感じました。

SACDの音

 ニューヨーク・フィルの音は、好意的に言えば各楽器が溶け込んだ音です。悪く言えば、やや、つぶだちの鈍い音。マルチチャンネルよりは2chステレオのほうが、立ち上がりはいいようにも思えます。オケの再生音はオーディオ装置の能力に異存するかもしれません。

 一方、ムターのヴァイオリンは程よい距離感で、圧迫感がなく聴けて美しいです。
 ヴァイオリンはどんなに消え入るような弱音になっても、きっちり耳に届きます。カデンツァでのダイナミックレンジはかなりあると思います。

 マルチチャンネルは、透明な三次元空間をつくるというよりも、2chステレオをさらに広げた感じ。ヴァイオリンは2chより距離感がでますが、それでも細部まで、きっちり耳に届く解像度でした。

 個人的には、マルチチャンネルよりも2chステレオで聴いたほうが、聴き心地は良かったです。2chステレオのほうが音に重心が出るので、ベートーヴェン的な力強さを伝えてくれると思いました。

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アンネ=ソフィー・ムターのSACD
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2012.2.27