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ジャン=ギアン・ケラス(vc)ビエロフラーヴェク指揮プラハ・フィルハーモニアオーケストラ
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲/ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」

Hybrid Stereo/Multi-ch
録音2004年
輸入盤、harmonia mundi France

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デジパック仕様。中にブックレットがある。仏英独の解説。

チェロ協奏曲と「ドゥムキー」でトータル69分43秒。

数ある協奏曲のなかでも屈指の名曲、
“ドボコン”ことドヴォルザークのチェロ協奏曲

 ドヴォルザークのチェロ協奏曲(略して“ドボコン”)は、クラシックの数ある協奏曲のなかでも屈指の名曲です。胸を打つ旋律に、かのブラームスも舌を巻いたらしいですが、いやいや、この曲の前ではクラシック界屈指のメロディーメイカー、チャイコフスキーでさえかすむほどです。
 この協奏曲は何十年聴いても飽きない。それどころか、いろいろな演奏で聴き比べたくなるほどです。もしこの曲がヴァイオリンやピアノのための協奏曲だったら、ここまでのめり込まなかったはず。人間の声に近く、エモーショナルな音色を持つチェロだからこそ、なんですね。
 アナログ時代にはロストロポーヴィチやデュプレの名盤がありましたが、本作はSACD時代の“ドボコン”として、コレクションに入れたい1枚なのでご紹介します。

涼としたさわやかさと充実の中低音、歌うケラスのチェロ

 ジャン=ギアン・ケラスはフランスのチェロ奏者。かつてはブーレーズ率いる現代音楽団体アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーだったとか。1967年生まれなので、今は円熟期でしょう。
 ケラスの演奏は、ロストロポーヴィチが父親的で雄大な演奏をしていたのとは対照的に、さわやかに鳴り響く感じです。まるでロストロポーヴィチのチェロより、ひと回り小さい楽器のようです(実際は、そんなことはないのですが)。
 ケラスの演奏は“駆ける美しさ”を味あわせてくれます。涼とした風が吹いているよう。それでもチェロ独特の「中低音の味わい」は、一瞬も消えることはないのでご心配なく。動でありながら深み、厚みのある演奏です。
 協奏曲の随所にあらわれる胸をかきむしる旋律(これがたまらない!)はスラヴ的な哀愁ただようものですが、ケラスはなにかイタリアのカンタービレの血が投入されたかのように、熱くじわりと(←矛盾しません)歌い上げます。こちらが「こう弾いてくれぃ!」と願うそのままでした。
 この協奏曲の魅力に、チェロとオーケストラの“極上の絡み合い”がありますが、ケラスとプラハ・フィルハーモニアは一体感があり、すごくいいです。特に第2楽章でのやりとりは最高。

マルチチャンネルは透明な空間

 マルチチャンネルでは、空間はとても透明。前面に広くオーケストラが広がります。ほどよい近さで、実際なら前の方の席でしょうか。
 中央やや左にチェロ。響きがとてもよく、まるでステージの板の上の響きがチェロをくるんでいるよう。そのさらに上を、そっとやわらかくホールトーンの響きが覆っているという感じです。

「ドゥムキー」について

 SACDに同時収録されているのは、ピアノ三重奏曲「ドゥムキー」。さすがに屈指の名曲、チェロ協奏曲のあとに聴くと、室内楽ということもあってか埋め合わせに思えてしまう。有名曲のあとの宿命か。
 しかし日をかえて「ドゥムキー」だけ取り出して聴いてみると、これもなかなか良い曲です。構成する6曲のまとまりは少ないですが、ドヴォルザークらしい旋律美のあるピースです。
 オーディオ的にもマルチチャンネルでは、チェロ、ヴァイリン、ピアノの響きが混ざり合う、たっぷりとした空間が前方にできます。これはチェロ協奏曲の時とはちがうオーディオの響き。「ドゥムキー」だけを楽しむ日を作ってもよいと思いました。

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みんな聴いてみたい。ドボコンのSACD
Dvorák: Cello Concerto; Bruch: Kol Nidrei; Tchaikovsky: Variations on a Rococo Theme
名手シュタルケルのチェロ。
Dvorák, Walton: Cello Concertos
リヴィングステレオの名盤。ピアティゴルスキーのチェロ。
Dvorák: Cello Concerto; Strauss: Don Quixote
マイスキーのチェロ。2枚組。もう1枚にはチェロをともなうR.シュトラウス「ドン・キホーテ」を収録。
Dvorák: Concerto for Cello & Orchestra; Symphonic Variations
チェロはウィスペルウェイ。これまたSACD時代の注目盤。
2009.5.24