
|
モーツァルトのクラリネットの名曲2曲をカップリング
このSACDは、モーツァルトが晩年に書いたクラリネットのための2曲、クラリネット協奏曲とクラリネット五重奏曲のカップリングです。
クラリネット協奏曲もクラリネット五重奏曲も、モーツァルト晩年の、透明感と無常感に溢れています。どちらもクラリネットの為の曲として最高峰なのは万人の認めるところでしょう。
個人的にモーツァルトのクラリネット協奏曲は、クラシック音楽の中で特別な存在です。もし大切な1曲を選べといわれたら、バッハの「マタイ受難曲」でもベートーヴェンの第九でもなく、この曲を選ぶでしょう。それほど言葉ではいえないほどの「慰み」を、この曲からもらっているのですから。
マリナー親子による共演
指揮者はネヴィル・マリナー、演奏はアカデミー室内管弦楽団。クラシックファンにはお馴染の(ある意味懐かしい?)顔触れです。
昔からマリナー&アカデミー室内管弦楽団は、良い意味の「安定した危なげない」演奏で好感がもてました。レパートリーも広く録音も多いので、ちょっと「カラヤン/ベルリン・フィルの小型版」というイメージもありましたっけ。
でも優等生的に陥ることなく、ハツラツとした“小気味よさ”が魅力です。モーツァルトでは初期の交響曲などいいですね。映画『アマデウス』で彼らの演奏が採用されたのも十分わかります。筆者もアンサンブルの巧みさ、弦のほどよい厚みの音が好きです。アカデミー室内管弦楽団の音をSACDで聴けるというのもうれしい。
独奏クラリネットは、ネヴィル・マリナーの息子アンドリュー・マリナーです。父親は80歳、息子は50歳という2004年のアニバーサリー録音盤です。
至福の曲を、SACDで聴く至福
SACDマルチチャンネルで聴く、クラリネット協奏曲とクラリネット五重奏曲は至福の時間です。やはり音楽が部屋全体に広がるのはすばらしい。曲が曲だけに、涙もののひとときです。
オーディオ的には室内楽であるクラリネット五重奏曲のほうが、効果は大きいと思います。残響に包まれるので、奏者と同じ部屋で聴いている状態になる。
特筆は第2楽章「ラルゲット」。モーツァルトの枯れた筆さばきは、誰にも到達できない心境です。弦楽器とクラリネットの倍音が豊かに再生されるのだろう、音が良い意味で“淀んでいる”ような気さえする。SACDならではと思いました。
Amazon
 2008.12.13
|
|